求められるのは
等身大のリーダーシップ
以上3つの病理は、いずれも組織文化の問題という点で共通しています。そしてその文化を作っているのは、最終的にはリーダーです。
かつての理想のリーダー像は、トップダウン型のカリスマでした。それが利益至上主義や独断専行と結びつくと、これほど組織にとって危険なものはありません。
結果を出せ、できない理由を言うなという圧力で、現場はいかなる手を使ってでも数字を出すことを優先するようになります。ニデックの不正会計や旧ビッグモーターの保険金不正請求は、強烈なリーダーのもとで作られた文化が組織を蝕んだという点で共通しています。
しかしこうした強力なリーダーシップがよしとされたのはもはや過去の話です。エンロン事件など相次ぐ企業不祥事を背景に、2000年代前半以降、倫理性や透明性を備えたリーダーシップとして「オーセンティック・リーダーシップ」への関心が高まりました。
オーセンティックとは無理に強いリーダーを演じることではなく、自分自身をよく知り、正直で筋の通った関わり方で周囲から信頼されるリーダーシップの形です。
その特徴は4つあります。まず自己認識です。自分の強みと弱み、感情の癖、周囲に与えやすい影響を正確に把握する。例えば意思決定が早い自分は結論を急ぎすぎると自覚していれば、会議であえて反対意見を求めて議論を深めることができます。
次に倫理的視点があることです。成果のためなら何をしてもいいわけではないという強固な意志を持つことです。営業目標が厳しくても、顧客に誤解を与えて契約させるような説明はしない。部下に過度なサービス残業を暗黙に求めない。短期の利益より正しいあり方を優先するのです。
3つ目がバランスの取れた処理です。自分の考えだけで突っ走らず、行いを振り返り、異なる意見に耳を傾ける。事を起こす際には、ベテランや若手、現場と管理部門それぞれの声を聞く。実行後に現場でどう受け止められたかを確認する。これが独善を防ぎます。
4つ目が関係の透明性です。正直にオープンに周囲と接し、自分が何を考え、なぜそう動くのかを周囲に見えるようにすることです。役員室から命令するだけのリーダーは、思考の過程が見えません。この判断をした理由、迷っている点、前回自分の見立てが甘かった点などを率直に伝えられるかどうかが、今のリーダーに求められています。
組織文化の変容には時間がかかります。文化には強い慣性の法則が働くため、異なる価値観を持つメンバーが入ってきても、その人が組織文化を変える前に、組織文化がその人を変えてしまいます。だからこそ、リーダー自身が変わらなければならないのです。
リーダーは日頃から自己認識、倫理的視点を持ち、バランスの取れた処理をし、オープンな対話ができているか、都合の悪い情報が上まで届いているか、現場が意見を言いにくくなっていないか問い続ける必要があります。自分自身と自分の組織文化のあり方を問い直すことが組織を内側から守る最初の一歩になります。
※1 Ashforth, Blake E., and Fred Mael.“Social Identity Theory and the Organization.” Academy of Management Review 14, no. 1 (1989): 20–39.
※2 ※Gouthier, Matthias H. J., and Miriam Rhein. “Organizational Pride and Its Positive Effects on Employee Behavior.” Journal of Service Management 22, no. 5 (2011): 633–649. doi:10.1108/09564231111174988.
※3 Umphress, Elizabeth E., John B. Bingham, and Marie S. Mitchell. “Unethical Behavior in the Name of the Company: The Moderating Effect of Organizational Identification and Positive Reciprocity Beliefs on Unethical Pro-Organizational Behavior.” Journal of Applied Psychology 95, no. 4 (2010): 769–780.
※4 Meyer, John W., & Rowan, Brian. (1977). Institutionalized Organizations: Formal Structure as Myth and Ceremony. American Journal of Sociology, 83(2), 340–363.








