失敗すると思われた「セブン銀行」がうまくいったワケ

 鈴木氏が手がけた「セブン銀行(のコンビニATM)」ほど、この原理を雄弁に語る事例はない。

 2001年の開業(当時はアイワイバンク銀行という社名)から1年目、2年目は赤字が続いた。金融界からは「素人が始めても失敗する」「経営が成り立つはずがない」と冷笑され、当事者たちも当然不安に駆られた。

 だが鈴木氏だけは、利用件数がじわじわと伸びていく様子を横から見て、いい方向に進んでいると感じていた。爆発点の原理を知っていたからだ。

 ここでのセブン銀行の判断は、常識から見れば奇妙ですらある。1台ごとに採算が合うかどうかなど問わず、すべての店舗にATMを置き、提携する金融機関を増やし続けた。

 普通の経営なら、もうからない場所には置かない。だがセブンは逆を行った。露出の総量を臨界点まで積み上げることを優先したのだ。結果、3年目を迎えるころからATM1台あたりの1日平均利用件数が急速に立ち上がり、ついに当時約70件という採算ラインを突破する。

 当時、新設された4つの銀行のなかで唯一、金融庁が課した「3年以内の黒字化」を達成した。コンビニにATMを置くだけなら、銀行各行と共同運営会社をつくる道もあった。だが困難を承知で自前の銀行をつくったのは、設置をすべて自分でコントロールし、爆発点を意図的に呼び込むためだったのである。

 ここまでが、爆発点を「呼び込んだ」側の物語だ。だが世の中には、爆発点の存在を知らぬまま、自ら火を消してしまった企業のほうが圧倒的に多い。

「有名なのだから、目立たせなくても客は買う」――魚フライの誤りを、業種を変えて繰り返しているわけだ。いくつかみていこう。

日本マクドナルド「メニュー表」の失敗

 2012年、日本マクドナルドはレジカウンターの上に長年置かれていた下敷き型のメニュー表を全店で撤去した。狙いは明快で、レジ前でメニューを選ぶ客の滞留をなくし、注文を速くすることだった。

 その裏にあったのは、まさに魚フライと同じ理屈である。ビッグマックもてりやきマックバーガーも国民的に知られている。だから大きくメニューを見せずとも、客は頭の中で決めてから来店し、すんなり買ってくれるだろう、と。

 しかし、結果はダメだった。