コンビニから消える雑誌コーナー

 もうひとつ、個人的に着目しているのが、日本のコンビニで静かに進行している現象である。

 かつてコンビニの顔だった、窓際にずらりと並ぶ雑誌の棚が、年々縮小されていることだ。空いた場所は日用品やペットフード置き場、イートインなどに置き換わっている。

 雑誌を売りたい立場からすれば、その判断の根にあるのも、やはり同じ仮説だろう。人気の週刊誌や漫画には固定ファンがいる。棚を小さくして奥に追いやっても、本当に欲しい客は探して指名買いするだろう、と。

 だがこの読みは、爆発点の原理を根本から見誤っている。雑誌の売上を支えていたのは、その日に必ず買うと決めたコアなファンではない。弁当やコーヒーを買うついでに、ふと表紙のキャッチコピーやグラビアが目に入り、思わず手に取った――そういう偶然の視覚的出会いに導かれた層だったのだ。

 窓際の特等席に何十種類もの表紙がズラッとで並ぶ光景は、強烈な視覚的磁場を放っていた。背表紙しか見えない陳列に変わった瞬間、その磁場は崩壊し、雑誌は背景の壁と同化する。客はそこに雑誌があることすら脳で処理しなくなる。売り上げは緩やかにではなく、臨界点を割った水が一気に冷えるように急落していったはずだ。

 そもそも構造不況である雑誌業界だが、雑誌売り上げの急落が突然やってきているというのは、鈴木氏の理論からしても説明できると思う。

 コンビニの主役の座を追われた雑誌は、脇役どころか、コンビニの売り場の片隅にも並べてもくれなくなった。

 セブンとそれ以外を分けたものは、才能でも資本でもない。爆発点という沸点の存在を、本当に信じていたかどうかである。鈴木氏はもうからないATMを全店に置き、リンゴを陳列棚3本分積むことに躊躇しなかった。臨界点を超えるまで火を弱めなかった。

 一方で多くの企業は、99度で「これは沸かない」と判断し、自ら火を引いてしまう。フェイスを減らすという決断は、単なるスペースの節約でも、デザインの洗練でもない。それは、客の無意識に働きかけ購買衝動に水をかけるということにつながるのだ。

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