ローソンのパッケージデザインの失敗

 下敷き型メニューがなくなった途端、「メニューが見えない」「何があるのか分からず注文しづらい」という声が殺到。

 客はたしかにマクドナルドにハンバーガーがあることを知っている。だが「知っていること」と「今それを注文したいと強烈に感じること」は、脳の中で全く別の処理なのだ。

 巨大なメニュー表は商品の一覧表ではなく、客に向けた無言の提案だった。それが消えた瞬間、「ついでにポテトも」「期間限定のパイも頼もう」という、その場の視覚刺激から生まれる衝動が一斉に蒸発した。

 ついで買いは計画の産物ではない。目の前に差し出された豊かさへの反射にすぎない。同社はやがて方針を転換し、店頭のメニュー掲示を復活させた。

 ローソンでも失敗例がある。2020年春、ローソンはデザイナー・佐藤オオキを起用し、約700品目のプライベートブランドのパッケージを一斉に刷新した。

 食品はベージュ、日用品はグレーに統一し、これまで大きく刷られていた商品の実写写真を思いきって排除した。代わりに小さな手書き風のイラストと小さな文字。無印良品をも思わせる、洗練の極みのような引き算のデザインだった。生活空間に溶け込み、女性も手に取りやすい――その理屈は、会議室では美しく見えたはずだ。

 だが店頭は会議室ではない。「パッと見て何の商品か分からない」「牛乳と低脂肪乳の区別が一瞬でつかない」「高齢者には商品名が読めない」などといったクレームが相次いだのだ。

 コンビニの客は数秒で直感的に商品を選ぶ。大きな商品写真や派手な色は決して無駄なノイズではなく、商品の本質を一瞬で伝える不可欠なインターフェースだったのだ。ベージュに統一された棚は、巨大な保護色の壁となって客の視線をすり抜けた。

 ローソンはやがて修正に踏み切り、小さかった商品画像をパッケージの半分以上を占めるほど巨大化させ、シズル感のある実写へと回帰した。