はじめから「全員が安心と居場所を感じるクラス」や「一人一人の個性が尊重されるクラス」が成立している教室はありません。授業や普段の関わりを通して、次第にジワジワと実感していくものだと思います。

 年度当初は、特に、教師と子どもたちとの「垂直的な信頼関係」が重要になります。「垂直的関係」というと、「上下関係」「規範意識の徹底」のような、子どもたちを教師のコントロール下に置くというイメージを抱かせがちですが、決してそういうことではありません。子どもたちに伝えたいのは「先生から大切にされているという実感」です。

 人の心はそう簡単には変えられません。自分が「変わりたい」と思えるから変わっていきます。そのときに「自分が周囲からどれだけ大切にされているか」を感じ取れるかどうかがポイントです。

「できて当たり前」を捨てて
子どもの特性を尊重する

 インクルーシブな学級をつくるためには、「◯◯できて普通」「◯◯して当たり前」という固定観念を持たないようにする必要があります。先入観があると「その子らしさ」に目が向かなくなるからです。どんなに目立たない小さなことであっても、すてきなことは取り上げ、認めていくスタンスを保つことから始めます。

●子どもの言葉に対してていねいに傾聴する

 国連が示す「子どもの権利条約」では、子どもが安心して意見を表明できることは子どもの権利の1つであると明確に示されています。従って、教師が子どもの言葉に耳を傾け、言い分をていねいに聞き取ることこそが、人権尊重の第一歩だと言えるでしょう。

 傾聴とは「ただ言い分を聞く」ということではありません。本来の傾聴とは「相手の言葉の真意を理解できているだろうか」とセルフチェックしながら聞くことを言います。理解できていないと感じたときには「詳しく聞かせて」「◯◯ってことで合っている?」と問いかけながら、理解を深めます。