大国といえども、自らが思うほどの力を持っているわけではないことが明らかになりつつある。昨年就任したドナルド・トランプ米大統領は、「力こそ正義」という姿勢を臆面もなく推し進め、米国の勢力圏を中心とした国際秩序の再構築を目指した。これは、ロシアや中国の世界観とさほどかけ離れていない。未来は、古代ギリシャの歴史家トゥキュディデスの言葉として繰り返し引用される一節によって形作られるかのように思われた。「強者はその意志のままに行動し、弱者はその運命に甘んじるしかない」これは紀元前416年、滅びゆくメロス島の住民に対し、侵略してきた古代ギリシャのアテナイ軍が発した言葉で、カナダのマーク・カーニー首相が1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)で行った演説で大きく取り上げられ、波紋を呼んだ。それはトランプ氏がデンマーク領グリーンランドの領有計画を巡り欧州と激しく対立していた時期のことだった。