俵万智 作
眠り泣き飲み吐く吾子とマンションの五階に漂流するごとき日々
『プーさんの鼻』

 身近に頼ったり尋ねたりする人がいないまま育児をする日々。その不安な気持ちを詠んだ歌です。前半が情景で、後半が心情になっています。大きな海を、子どもと二人で漂流しているような気持ちでした。「吾子」はわが子を表す言葉です。

あんなに楽しんでいたのに
翌日にはもう飽きている

山口もえ 作
雪だるま最高傑作できたのに
数日経ったら忘れてる
――雪が降って大喜び。雪だるまを作りたい子どものために、丸い砂利を探して目にするなどして最高傑作が完成。何日か経って溶けてくると、見向きもしなくなりました。

 新しい遊びやおもちゃなどを夢中になって楽しんでいたのに、次の日にはもう飽きて、見向きもしなくなってしまう。これも、子どもには本当によくあることです。すべての親が共感できそうな子どもの不思議な行動を、雪だるまという季節感のあふれるもので表現したところがいいですね。

 特に「最高傑作」という漢字四字の、インパクトが抜群です。子どもと一緒に盛り上がって作った様子が目に浮かびますし、できあがった喜びを表現するうえでも、この言葉の強さが生きています。それに対して、最後の「忘れてる」が妙にあっさりしているのもおかしみがあって、落差を表現できています。

 最後は本来、七字であるべきところで、字足らずになっているため、山口さんは気にされていたのですが、ガクッとした感じが出るので、このままでも成立しているように思いました。

 もし言葉を足すとしたら、こんな感じでしょうか。

 雪だるま最高傑作できたのに数日経ったら忘れている子

 雪だるま最高傑作できたのに数日経ったら忘れているよ

俵万智 作
水遊び 水と遊ぶということを盥の中で子は続けおり
『プーさんの鼻』

 子どもの遊びという同じテーマですが、逆に「よく飽きないなあ」という気持ちを詠んだものです。水遊びという言葉は、「水で遊ぶ」というより「水と遊ぶ」ものなのだと感じました。