李在明大統領が反日を抑える理由
李在明大統領が反日政策を抑えている理由は明らかだ。
第一の理由はここまで述べてきた世論の変化だ。日本を敵視するだけでは、もはや若者を動員できない。
第二に、経済と安全保障の現実がある。北朝鮮、中国、米国の不確実性、半導体、AI、エネルギー、サプライチェーンを考えれば、韓国にとって日本との協力を壊す余裕はない。
第三に、反日だけでは選挙で票が取りにくくなっていることだ。かつては反日を叫べば求心力を高められた。しかし今は、反日が強すぎると、むしろ「時代遅れ」「実利を無視している」と見られるリスクがある。
気をつけるべきなのは、韓国が「親日化」したわけではないことだ。歴史問題や竹島問題では韓国の主張は変わっていない。若者が日本文化を好きになったからといって、日本の歴史認識を受け入れるわけではない。
韓国社会では「嫌い」を一つに束ねる「反日」カードが弱まり、「好き」や「便利」や「必要」が多様化している。日本旅行が好き。日本人は親切だと思う。日本のアニメは見る。日本の製品は買う。だが、歴史問題では相変わらず日本に謝罪を求め続ける。これが今の韓国人の「分離型対日認識」である。
日本がとるべき態度
日本に必要なのは、韓国の変化を歓迎しつつ、過剰に期待しないことだろう。
韓国の反日は弱まっており「好き」や「実利」が前面に出ることが増えている。だが、経済危機、外交摩擦、政治スキャンダルが起きれば、「嫌い」はすぐに再動員される。韓国社会の反日感情は弱くなったが、有事ではまだまだ機能する。
日本側が理解すべき最大のポイントは、韓国における反日の本当の標的は、しばしば日本ではなく「韓国内の政敵」だということだ。
反日は日本を攻撃しているように見えて、実際には韓国国内の保守派を攻撃するために使われる。日本側が感情的に反応すればするほど、韓国の反日勢力には好都合である。「やはり日本は反省していない」という物語を作る材料を与えてしまうからだ。
日本としては、韓国社会の根本変化を見逃さず、かつ「反日」に転じる可能性を常に念頭に置いて、冷静に対応する必要がある。
歴史問題をめぐる韓国側の国内政治の構造は、反日を必要とする勢力がいるかぎり温存し続ける。彼らは日韓関係が安定すればするほど、自分たちの存在理由を失う。だからこそ、危機を作り、怒りを再生産しようとするのである。
李在明大統領が反日政策を抑えているのは、親日になったからではなく、反日ではこれまでのように動員できなくなったからである。韓国の反日は終わったのではないが、反日だけで韓国社会を説明できる時代は終わったと見るべきだろう。
韓国における反日感情の変化を適切にとらえることが、対韓外交を効果的におこなうために最も重要である。
(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)







