メンバーは思った以上にルールを破る本人だけではなく、マネージャーの対応を見ています。「あの人は毎回定例会議に出ないのに、なぜ注意しないのか」「みんなが報告書を作成しているのに、なぜあの人だけ許されるのか」「これで問題ないとでも思っているのか」といった不満がメンバーの中に蓄積していきます。
ルールを守る自分たちが損をしているとメンバーが思い始めると、組織の公正感が損なわれ、上司への不信につながり、チーム全体の規律が崩れます。一人のルール違反は、その人だけの問題ではなく、マネージャーの信用問題にも関わってくるのです。
ですから、マネージャーはルールを守らない人をメンバーの前できちんと指摘してください。
フィードバックの基本は、ネガティブな内容であればあるほど、本人のメンツを守るために個室で行うのが定石です。これはポライトネス理論などでも提唱されている考え方です。ただ、チーム全体に影響を及ぼすルール違反の場合は、少し対応を変えなければなりません。
一度の欠席であれば、会議後に個別に「何かあったの?」と聞く程度で構いません。「忘れていました」「急に電話が入って」といったやり取りで済むでしょう。しかし2回、3回と続けば、周囲がざわつき始めます。
そのタイミングを逃してはなりません。次にその人がオフィスに姿を現したとき、みんなに聞こえる場所で「この前の会議の時間、何か予定があったの?」と本人に声をかけ、定例会議の意義と参加の必要性を明確に伝えます。叱るというより、改めて指示を伝え直すイメージです。
そのとき、 少しでも不服そうな様子を見せたら、個別のチャットなどで「さっきの件、参加できない事情があるかもしれないから少し話そう」とフォローしてください。健康面や家庭の事情がある可能性も考えられるからです。その際は必ず個室で確認するようにしてください。
ハラスメントリスクを懸念して、人前での指摘を躊躇する人もいるでしょう。しかし、目的は本人を叱ることではなく、チームの公正感を保つ姿勢を見せることです。マネージャーへの信頼は、メンバーが「自分たちは公平に扱われている」と感じることから生まれます。
そして、意外かもしれませんが、衆人環視の中で適切な言い方で指摘するのは、ハラスメント対策としてむしろ有効です。仮に本人がパワハラを申し立てた場合、個室での指摘は「言った・言わない」の水掛け論になりますが、公開の場での注意なら、周囲が「あれは適切な指導だった」と証言してくれます。
実際、部下のルール違反を指摘したマネージャーがパワハラだと訴えられた際、現場の聞き取りでチーム全員が「通常の指導だ」と証言した例がありました。 後日、そのマネージャーが転職すると、チームも丸ごと転職するほどの強い信頼関係が築かれていました。
小さいことだからこそ、一度の注意で終わらせず、必ず決着がつくまで見届けることが重要です。これを妥協なく徹底することが、マネージャーとしての責任なのです。








