結婚、やめようと思うんです→上杉柊平が見せた「一流の返答」にグッときた〈風、薫る第57回〉

太一が盗み聞き

 安が結婚を渋っていると聞いた宗一が団子屋に、安、りん、シマケン(佐野晶哉)を呼び出し、穏便に破談の話を進めようと相談する。よくできた人物だから、破談で両親や関係者を騒がせてはならないと考えたのであろう。

 この秘密会議を太一が表で盗み聞きしている。

 だが、ここで、宗一の穏やかで広い心に触れた安は、宗一から目が離せなくなってしまう。

 安の言い分を聞いた宗一は「確かに理にかなっている」と肯定。

「結婚はよく言えば、お金と子どもを男女で補い合う。悪く言えば利用し合うものですから」「お金も子どもも満たされているなら、得体のしれない家に嫁ぐのは危ない賭けのようなものだ」と、安の気持ちを完璧に理解する。

 長男である宗一は、これといってやりたいことがあるわけでもないので、結婚し、家を継ぐことで、小説家という夢のある弟を応援できれば、と言う。だから、安のことも応援すると。

「安さんの思う、少々変わってる確かな幸せを」

 さらに宗一は、顔合わせのとき、安が環(英茉)に話をつくって笑わせるのが好きだと聞いて、「人を笑わせたいと思う人と暮らすのも楽しそうだなって思ったんです」と安への好意も語る。

 太一ほどガツガツしてなくて、上品で感じのいい宗一。

「知らぬ間に目で追っている」
「笑顔に吸い込まれそうになる」
「ええ、それが恋です」

 盗み聞きしながら、太一は安が宗一に「恋」していることに気づく。

 社会が勝手に決めた婚姻制度に疑問を感じた安が、恋をして、その感情で自分の道を選択するであろうことを感じさせる。

 太一が言葉で説明すると堅苦しい感じもする「恋」の概念が、安の体験を伴うと心が躍る感情に姿を変える。

 ここから恋愛が、日本人の娯楽として定着していく。「看護婦」のはじまりだけでなく、「恋愛もの」のはじまりまで書いているかのような第57回であった。現在当たり前に感じているあらゆることが明治からはじまったのだ。