
リンゴか団子かそれが問題だ
全員がそろって休暇が取れた日。
軽快な唱歌のような劇伴をバックに、お出かけ準備がはじまる。
トメが得意のりんごを人数分、用意するが、「そんなにいらないわよ」「荷物になるだけです」と却下される。
仲良い証拠のきつい言葉遣いであることは、脚本家の意図であるのは受け止めるが、やっぱり、ちょっと、こんな言い方どうなんだろうと思ったりもする。
でも、トメのリンゴが却下されるのには作劇上の理由があるのだ。作劇上の理由――夢のない言葉である。
おやつのリンゴの代わりに団子を購入するべく団子屋に立ち寄る一同。
そこには、チュウ(若林時英)が働いていた。
突如、ううう、と団子屋の主人(小杉幸彦)が倒れ、りんたちはきびきびと看護をはじめる。
これで列車の時間には間に合わず、お出かけは中止に。
すぐ回復。
お礼にコーヒーをふるまう主人。
「本当に済まないね。せっかくのお出かけだったのに、環ちゃんごめんね」と主人は恐縮。
そう、お出かけには環(英茉)も参加していたのだ。
だが、環は「みんな立派な看護婦さん。すてきだった」と好回答。りんの母としての面目、再び躍如。お母さんの働くすてきな姿を娘に見せることができた。
初めてのコーヒーを飲む6人。
「やっぱりこのコーヒー苦い」
「一生この味忘れない」
お出かけにいけなかった苦さ。
養成学校が閉鎖する苦さ。
7人で始まった第一期生が次第に離れ離れになっていく苦さ。
それを初めて飲むコーヒーで表現。第57回に続いて、作家の筆は好調そうだ。
この果たされなかった楽しみは、過去の朝ドラ『ひよっこ』(17年度前期 岡田惠和脚本)に秀作がある」。ラジオ工場に出稼ぎに来ていた主人公と同僚たちが海へお出かけに行こうとして、あいにくの雨でいけなくなる。なんともいえない余韻のあるエピソードであった。
また『虎に翼』(24年度前期 吉田恵里香脚本)では、主人公が法律学部の同級生と海に行く。それは共に学んできたひとりが故郷に帰ることになり、思い出づくりのためだ。
あいにくの曇り、しかも理想的な海のシチュエーションでもなかった。それでもみんなでひとときはしゃいだ海の思い出はその後も彼女たちのなかに強く残っていく。
期待していたのとちょっと違った思い出は、朝ドラ作家の腕の見せどころだ。








