それらの出来事をいちいち正確に、冷静に、いろんな情報を加味して判断するのは、疲れます。

 だから、ショートカットして判断するのです。

 それが「自動思考」です。

 この「自動思考」は、たいてい「これまでの経験」から生まれます。

 先ほどの例であれば、部下が(3)と受け取ってスルーしていたところ、上司が怒っていて大変な目にあったとします。

 きっと部下は、すごく嫌な思い、困った経験をするはずです。

 すると人間の脳は、その経験から「『了解です』を、『文字どおりに受け取ってはいけない』」と学習するのです。

 この経験による学習から「自動思考」が生まれます。

 次の機会に、上司からのメールの返信が『了解です』だけだった場合、とっさに(1)のルートが思い浮かぶようになるのです。

出来事と感情の間には
「認知」が挟まれている

「仕事でミスをして、苦しい」
「上司にチクチク言われて、つらい」

 こんなふうに「苦しい」「つらい」が瞬時に思い浮かぶとき、

「目の前の出来事が原因で、その感情が生まれる」

 私たちはそう思いがちです。

「仕事でミスをした」という出来事があるから、自分は苦しい。

「上司にチクチク言われた」という出来事があるから、自分はつらい。

 つまり「出来事→感情」という流れです。

 でも、実際は出来事と感情の間には、「見え方・とらえ方(認知)」が挟まれています。

「出来事→感情」ではなく、「出来事→見え方・とらえ方(認知)→感情」という流れなのです。

 この「見え方・とらえ方」は、フィルターやレンズを想像してもらうとわかりやすいでしょうか。

 たとえば、目の前に鮮やかな緑の景色が広がっていても、サングラスをかけて黒のレンズを通して見れば、くすんだ色に見えますよね。そんなふうに、私たちは無意識のうちに「自分のレンズ」を通して世界を見ているのです。

 冒頭の例でいえば、「仕事でミスをして、苦しい」のミスの具体的な内容を「メールで宛名の社名を間違えた」だとします。