小学校から企業研修、さらには少年院まで、さまざまな現場で教えてきた小説家が教える、世界一やさしい「言語化」にまつわる授業。本記事では、子どもも読めて、大人に刺さる『小学生でもできる言語化』をもとに、「ありきたりなことしか言えない人の特徴」について、豊福太一氏にご寄稿いただいた。(企画/ダイヤモンド社・秋岡敬子)
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ユニークな人との出会い
先日、とてもユニークな人にお会いした。
一部の大手企業トップたちの間で話題になっているブランディング会社「crack」を率いる大野陣さんという社長だ。
彼は、企業や団体が「言語化することが難しい」と感じる自社の「企業理念」や「ポリシー」といったものをアートで表現するお仕事をしている。
具体的には、依頼のあった企業に出向き、社長から平社員、クライアントや下請け先、オフィスの清掃員にまで徹底した聞き取り調査を実施。
その会社の魅力をあらゆる角度から言語化してもらい、さらにそれを世界中の有名なアーティストたちと共有。
絵や音楽にして提供するというのです。
「未来」「夢」「挑戦」ばかりになる理由
私は素朴な疑問を彼にぶつけました。
「それだけ大勢の人に取材して言語化することができれば、そこからいいキャッチコピーを生み出すことができそうなのに、なぜ絵や音楽にするんですか?」
大野さんは、こう答えました。
「キャッチコピーやスローガンだと、使い古された言葉をどうしても使わなくちゃいけなくなる。僕は嫌なんですよね、それ」
たしかに、建設会社なら「地図に残る仕事」とか「未来への夢の架け橋」なんて言葉がすぐに思い浮かびますが、どこかで聞いたことがありそうです。
言葉は決して万能ではない
『小学生でもできる言語化』という本では、著者で作家の田丸雅智氏が「言葉には限界があります」とした上で、こんなことを書いています。
自分の頭の中で鳴っているメロディーを正確に表現しようとしたら音で表現するのが基本的には一番であるように、言葉以外の方法のほうが表現しやすい場合や、言葉以外の方法でしか表現できないという場合も決して少なくありません。
――『小学生でもできる言語化』より
一流は「それっぽい言葉」に逃げない
私が取材したとき、大野さんは大手企業のシステム開発などを請け負っている会社からの依頼で、「巨大な地下都市空間」をイメージしたアートを制作していました。
システムエンジニアたちの仕事は裏方で、目には見えないけれど社会インフラを支える重要な役割を担っている。
そのことを、「縁の下の力持ち」なんて言葉は使わず、「地上の豊かな暮らしを根底で支える、地下の創造的な都市」というメタファー(暗喩)を用いて一枚の絵で表現しようとしていたのです。
大野さんは今、この「アートブランディング」という事業と並行して、「AIの開発」にも取り組んでいます。
こちらは逆に、トップセールスマンやベテラン社員が持つ「ノウハウ」を徹底して言語化。
企業ごとのAIに“暗黙知”と呼ばれる領域として提供し、新入社員でもいきなりトップパフォーマンスが引き出せる環境を構築しているのです。
言語化を否定するかのような事業を続けながら、言語化によって新しいビジネス環境を創造する大野さん。
彼のキャラクターはぶっ飛んでいて、私には言語化できない人物でした。
(本記事は、田丸雅智著『小学生でもできる言語化』をもとに作成しました。)








