まず、人々の幸福・福祉水準を高めるには、「人々の地域間人口移動を活発にしたほうが良い」「特定の地域に人が集まることを無理に抑制する必要はない」という考え方が導かれる。これは政府、各自治体が進めている「社会移動を小さくしよう」「一極集中を是正しよう」という政策方向とは全く逆の考えである。

 もう一つ、政策的に社会移動を左右するのは難しいことも示される。人々が社会移動を行うのは、基本的には、政策的に導かれたからではなく、自分が幸せになるためである。こうした自己のウェルビーイングを高めようとする自発的な動きに政策的に対抗するのは、言うべくして難しいだろう。

 議論のあるところだろうが、私はこうした理由の下、政策的に東京一極集中を是正するという考え方に批判的なのである。

人口が集中しないと
サービス業は発展しない

 さらに、近年における経済社会の大きな流れが集中のメリットを強めており、それが多層的集中(編集部注/総務省統計局『国勢調査報告』によれば、札幌、仙台、福岡などの地方中核都市の人口増加率は東京都区部や首都圏を上回る。つまり、人口の集中は東京だけではなく、各所で起きている)をもたらしているとも考えられる。集積のメリットを強めている経済社会の流れとしては、次の3点が考えられる。

 第1はサービス化だ。サービス産業には規模の経済性が強く作用する。サービス産業の特徴は、サービスの購入者が生産者のところに行かなければならないということだ。

 製造業であれば、九州で車をつくって、それを全国の購入者に配達できる。しかし、理髪店で頭を刈ってほしい人(購入者)は、理髪店(生産者)に行かなければならない。すると、人口が多いほど多様なサービス産業が成立するようになる。

 国土交通省国土政策局がまとめた「新たな「国土のグランドデザイン」(骨子)参考資料」(2014年3月)に、都市の規模別に各種サービス施設が立地する確率を分析した資料がある(表4-1)。

図4-1 サービス施設の立地確率が50%以上となる自治体の人口規模同書より転載 拡大画像表示