これによると、たとえば、郵便局、理容業などは人口2000人以下の小さな自治体でもほぼ100%立地している。しかし、学習塾は人口4500人規模以上でないと立地確率が50%に達しない。以下、立地確率が50%を超える人口規模を見ると、病院は9500人、不動産賃貸業は1万2500人、百貨店3万2500人、フィットネスクラブ6万7500人などとなっており、人口規模が10万人を超えると、ほとんどのサービス施設の立地確率が50%を上回る。
こうして人口規模が大きくなると、より多様なサービスを享受できるようになり、さらにそのサービス産業で働く人が集まってくるという人口増加のメカニズムが生ずるのである。
人口集中の是正は
経済的マイナスが大きすぎる
第2の流れは情報化やIT革命と呼ばれる動きだ。我々の身の回りには、2種類の知識がある。一つは、文字や映像で知ることのできる「形式知」であり、もう一つは、フェイス・ツー・フェイスでしか知ることのできない「暗黙知」である。私の場合で言えば、経済分析を行う時に、参照する統計情報は形式知であり、同じような問題意識を持っている人が集まって研究会を開くことによって得られる情報が暗黙知だ。
『地域と人口減少の経済学 スマート・シュリンクという選択肢』(小峰隆夫、中央公論新社)
さて、情報化が進むと、形式知の相対的な価値は低下する。インターネットの発達で、距離を無視して、簡単に無料で入手できるようになってきたからだ。たとえば、役所が公表するデータは、昔は役所でしか入手できなかったが、今ではネットを通じて無料で手に入る。すると、逆に暗黙知の相対的な価値が上昇する。暗黙知は人と接しないと入手できないから、暗黙知を求めて人は集まるようになる。産業構造が高付加価値化し、顧客との細かい擦り合わせを通じて初めて競争力のある製品・サービスが供給されるようになってきたことも、こうした傾向をさらに強めている可能性がある。
第3は、高齢化だ。高齢者にとっては、何かと便利な都市部に住んだほうが、買い物、通院などに好都合だから、どうしても集まるようになるのだ。行政的なコストも集約したほうが安上がりである。
以上のように、経済主体(企業や消費者)が集積のメリットを追求した結果が多層的集中となって現れているのだとすれば、こうした集中を政策的に是正しようとすることは、都市の生産性、効率性を損ない、経済的にマイナス効果が大きいということになる。
集中を是正するより、集中のメリットを競い合うことのほうが重要だ。







