「責任を取れないから言わない」は
本当に誠実か

 もう1つ気になるのは、他人の人生に責任を持てないから断定的なことは言わないという姿勢についてです。一見、誠実そうに見えますが、私はそうは思いません。     

 そもそも、ひとたび人が人と関わった以上、お互い相手に一切の影響を与えずにいることなどできません。何を言おうが言うまいが、人は人になにがしかの影響を与えます。自分は何も言っていないから責任はないとは言えないのです。

 逆に、相談相手の人生を背負うこともまたできません。どんなに親身な助言でも、その人がその選択をするかどうかはその人自身が決めることです。自分の助言ひとつで相手の人生が決定的に変わることなどありません。

 影響を与えるのが怖いから何も言わない、というのはむしろ思い上がりだと考えていいでしょう。

 私は、自分から見えている景色を相手に伝える、仮説を渡すというイメージで話すようにしています。最後は本人が決めるからこそ、相談してくれた相手に対して、恐れず自分に見えていることを伝えることが誠実な対応ではないでしょうか。それが、相談者を応援することだと私は考えています。

「君はどうしたい?」は
最後の最後に聞く言葉

 では、「君はどうしたい?」とか「要は君がどうしたいかじゃない?」といった言葉は禁句なのでしょうか。そうではないのです。

 現状を一緒に整理し、本人の強みや市場価値、選択肢を提示する。そして、最後に本人が決断する段階に至ってはじめて、「君はどうしたい?」と聞く。順序が大切なのです。

 相談を持ちかける側にも、工夫の余地はあるかもしれません。漠然とした質問には漠然とした答えしか返ってきません。

「今転職していいんでしょうか」
「自分はどの会社に行ったらいいんでしょう」

 ではなく、

「こういう経験をしてきましたが強みは何だと思いますか」
「今の時点で市場価値はどのくらいですかね」
「こういう選択肢を想定していますがほかにありますか」

 このように具体的に聞けば、具体的な答えが返ってきやすくなります。質問の仕方で相談の質を高めることができるのです。

 キャリア相談において最も不幸なのは、十分な対話もなく、選択肢も提示されず、「要は君がどうしたいか」で話を打ち切られた相談者が孤独に迷い続けることだと思います。

 もし部下や後輩から相談を受けたら、まずは一緒に選択肢を整理し、自分なりの仮説を伝えてあげてください。それが結局は相手の主体性を引き出すためのもっとも誠実な応答だと思うのです。

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