とはいえ、「低所得の居住者にこれを負担しろとはなかなか言えません。オーナーを説得するほかないとは思いますが、薄利の状況で受け入れてくれるかどうかは不明です」と佐々木氏。

 一方で、ICTや孤独死保険を導入する不動産会社によれば、これらにもなかなか使いにくい部分があるという。中国地方にある不動産会社では、管理する物件の入居者の約3割を高齢者が占める。

 同社は、2020年に居住支援法人格を取得し、住宅に困る人たちの住まいの確保を支援している。高齢の新規入居者には、ICTの利用と孤独死保険への加入を義務づける。

異変に気づいたのは
センサーではなく近隣住民だった

 ある事例では、ICTのエラーが続き、問い合わせをしたところ、当該入居者が入院していることがわかった。その後、その入居者は病院で息を引き取ったが、生前に身元引受人の連絡先を確認できたことで、スムーズな死後処理につながったと評価していた。

 一方で、システムが異変を察知したときには、すでに亡くなっていることが多い。遺体の早期発見には役立つが、ICTによって孤独死を未然に防ぐことは難しいかもしれないと教えてくれた。

「実は、危険を察知して一報入れてくれるのは、近隣の人なんですよ」と同社の担当者は話す。「いつもの時間に買い物に来ない」「自宅から物音がしない」といった連絡が入り、社員が部屋まで出向いたら、倒れていて救急搬送というケースがこれまで複数回あったそうだ。

 また、新規入居者が加入することになる孤独死保険は、加入者が亡くなった後、法定相続人がその処理を行うことになる。法定相続人がいない場合、保険を利用するためには、自治体発行の死亡証明書が必要となる。

 しかし自治体は、個人情報保護を理由に、不動産会社に対してそれを発行しないのだという。「結局、身寄りがなく、孤独死した人の保険はこれまで一度も使えていないんです。身寄りがない人こそ、なんとかしてほしいのですが」とその事業者は漏らしていた。

 このように、一事業者が多大な負担を強いられる実態を見れば、高齢者が不動産市場から冷遇されてしまうのも理解はできる。とはいえ今後、単身高齢者の賃貸住宅依存がいっそう高まることが予見される。センサーの導入はより安価で現実的だろうが、それだけでは死亡事故を防ぐことや人々が抱える孤独を解消することまではできない。

 孤独死による経済的損失を回避するためだけに、機械に見つけられる死を、私たちの社会はどのように評価すればいいのだろうか。