落合陽一氏と田中慎弥氏落合陽一氏と田中慎弥氏 提供:徳間書店

携帯電話すら持たず、ネットやAIとも無縁で生きてきた芥川賞作家・田中慎弥。そんな彼が、落合陽一に勧められて初めてChatGPTと対話した。ところが、その受け答えに感じたのは未来への感動ではなく、「当たり障りのないことを言う政治家やサラリーマンのようだ」という妙なリアリティだった――。AIとの会話は孤独を癒やすのか。それとも、人間を別の形の「つながり」の奴隷にしていくのか。文明と孤独をめぐる異色の対談を読む。※本稿は、小説家の田中慎弥、メディアアーティストの落合陽一『堕落論 住めば都のディストピア』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

ネットワークが多すぎて
どこにいればいいかわからない

落合陽一(以下、落合):田中さんは著書『孤独に生きよ』で、タイトルの通り孤独に生きることのすすめを説いています。ここでいう孤独とはどんなものですか。

田中慎弥(以下、田中):人はできればだれかと一緒にいたほうがいいと思います。完全にひとりで生きていくなんて、どんな人だってできません。ましてや現代は、いくらひとりで生きていく決意をしたとしても、「いえいえ、あなたのことは世の中がちゃんとサポートしますよ」というのが時代の風潮です。完全にひとりになどなれないし、ならなくていいのです。いろんなところにネットワークができて、常時あちこちとつながり、だれひとり取りこぼさない社会を目指そう、と盛んに唱えられる昨今です。

 ハンディキャップのある人やシングルマザー、これまでつらい境遇に置かれていた人も、当然ながら尊重される世の中になってきています。いろんなコミュニティができて、家族や仕事場だけじゃない居場所ができる。それはたいへんいいことです。