加硫を終えてチャンバーから出てきたホヤホヤのタイヤには、新しいトレッドパターンがクッキリ刻まれている。ブロックの角もしっかり立っている。細かなサイプも見える。外観はまるきり新品タイヤだ。

加硫後のトレッド面加硫後のトレッド面。ブロックの角が立ち、細かなサイプもはっきり見える。バリ落とし前なので、まだゴムの「耳」が残っている。外観はほとんど新品タイヤのようだ Photo by F.Y.

 チャンバーから出て見違えるように生まれ変わったリトレッドタイヤ。最後に余計なゴムを落とす“バリ落とし”の作業を行う。

仕上げ作業仕上げ作業。余分なゴムを取り除き、外観を整えていく。最後の最後にはやはり人の手が入る Photo by F.Y.

ダブルネームのタイヤがある理由

 だがサイドウォール部を見ると、新品とは違う“物語”を持っていることが分かる。

 元のメーカー名が残っているのだ。ブリヂストン、ダンロップ、ミシュラン。新品タイヤの市場で競合するブランドだ。そのすぐ上には「TOYO TRT」の表示が入る。TRTはTOYO Retread TIREの意である。

これは面白いダンロップとTOYOのダブルネームこれは面白いダンロップとTOYOのダブルネーム Photo:Diamond
こちらはブリヂストンのスタッドレスタイヤ、ブリザックとのダブルネームこちらはブリヂストンのスタッドレスタイヤ、ブリザックとのダブルネーム。夏タイヤもスタッドレスも、根っこの台タイヤは実は同じなのだ Photo by F.Y.

 ルイ・ヴィトンとSupreme、グッチとThe North Face、ディオールとナイキ。

 高級ブランドの世界では、いわゆるダブルネームが大流行だ。無論リトレッドタイヤは売らんが為のコラボ商品ではないが、新品時のブランドと、再生を担ったブランドが、ひとつのタイヤの上に共存している姿はなかなかシュールで興味深い。そしてこの変則ダブルネームは、タイヤという商品が、一度売られて終わるものではないことを明確に示している。

タイヤに与えられた「第二の人生」

 新品として世に出て、物流の現場で使われ、回収され、洗浄され、検査され、選別され、削られ、補修され、新しいトレッドを与えられる。そして再び道路へ戻っていく。

 タイヤには、第一の人生と第二の(場合によっては第三の)人生がある。

 完成したリトレッドタイヤは、工場内の保管エリアに整然と並んでいた。

 新品タイヤ工場のような華やかさはないが、言いようのない実務的な迫力が感じられる。

完成したリトレッドタイヤが並ぶ保管エリア完成したリトレッドタイヤが並ぶ保管エリア。検査、洗浄、選別、バフィング、補修、加硫を経たタイヤは、ここから再び物流の現場へ戻っていく Photo by A.T.

 物流を止めない。コストを抑える。資源を無駄にしない。CO2排出量を減らす。それらすべてを、リトレッドで実現しようとしている。

 TOYO TIREの新潟リトレッド工場で見たのは、単なる古タイヤの再利用ではなかった。タイヤを最後の最後まで使い倒す……もとい、使い切るための、もうひとつの製造現場なのだった。

 来週は、タイヤ再生工場の技術者に詳しいお話を伺います。お楽しみに!

(フェルディナント・ヤマグチ)