Photo:Bloomberg/gettyimages
時価総額約50兆円で日本一となり、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのキオクシアだが、もともとは東芝の一部門だった。母体である東芝は、わずか10年ほど前まで「消滅」すら危ぶまれる経営危機に瀕していた。取締役監査委員会委員長だった久保誠氏の著書『東芝 転落の深層――経営不祥事と裁判』(朝日新聞出版)から、不適切会計のトリガーとなった幹部たちの生々しいメールのやりとりを紹介する。
バイセル取引残高の積上げ開始から久保の執行役専務財務担当就任まで
2008年6月に財務部長から執行役常務経営監査部長(CA長)に就任した。その2年後の2010年6月に東芝モバイルディスプレイ社社長に就任し、1年後の2011年6月に取締役兼執行役専務財務担当に就任した。
バイセル取引は、2004年1月に新たに設立された〈PC社〉の調達コスト改善PJの中で、カンパニー社長西田厚聰氏の下で調達責任者だった田中久雄氏により開始されたと言われている。
バイセル取引は、東芝がパソコン主要5部品(メモリー、液晶、HDD、CPU等)を購入し、それを台湾の大手ODM(台湾のコンパル、クァンタ等の大手ODMがパソコン・メーカーの商品企画を受け、組立製造、設計、その他部品調達までを安価に請け負うビジネス)に高値で販売(セル)し、組み立てられた完成品をODMから高値で購入(バイ)する取引である。
このバイセル取引は、日本国内で大手メーカーが下請けに安価に組み立てさせる有償社給取引(※1)によく似ていた。
※注1 有償社給取引:国内の大手メーカーが下請けに主要部品を売却(社給)し、安価に組立てを行わせる取引。主要部品の購入は購買力がある大手メーカーが行い、これを市場価格に近い価格で下請けに売却(社給)し、完成品を社給価格+組立費用で購入する。通常、社給(部品販売)と完成品購入の取引は一体の契約で結ばれることが多く、また下請けに対する社給品は「買戻し条件」が付されており、社給(販売)と購入は「一連一体の取引」であった。このため会計上社給(販売)時の利益計上は認められなかった。
下請けは大手メーカーより安価なコストで組み立てることができたが、部材の調達力では大手メーカーにかなわなかった。







