認識のずれ3——ブランドとは企業が果たすべき約束
もう一つ、実務の世界で広く使われている言葉があります。「ブランドは約束であり、CXはその約束を果たすことである」。この定義は、ブランドとCXの関係を整理する言葉として、長く受け入れられてきました。しかし、この定義には一つ、見落とされてきたことがあります。
約束をするのは企業です。履行するのも企業です。では、その約束と履行を受け取るのは誰でしょうか。顧客です。企業が約束し、企業が履行する。そして顧客はその外側にいて、結果を受け取る側として捉えられています。
しかし、企業と顧客では、そもそも起点が違います。企業は自分たちの約束を起点にします。顧客は自分の感情の記憶を起点にします。顧客は既に、過去の体験を通じて、ある感情の記憶を積み重ねています。その記憶の中に、このブランドへの期待が既に形成されています。企業が新しく何かを約束しようとするとき、顧客の記憶はもうそこにあるのです。
この起点を無視して、企業の側でつくりたい約束を先につくり、履行する。顧客の感情の記憶と、企業が履行したこととの間に、ずれが生まれます。そのずれが大きいとき、ブランドへの不信として刻まれ、顧客はその企業を選ぶのをやめてしまいます。
約束が起点ではありません。顧客の感情の記憶の現実が起点です。その現実を深く理解することで初めて、約束すべきことが見えてきます。
「ブランドは約束であり、CXはその履行である」という前提を手放したとき、仕事の起点が変わります。最初にやるべきことは、約束をつくることではなく、顧客の感情の記憶の中で今、何が起きているかを深く理解することです。







