認識のずれ2——うちはブランドを重視する必要がない
時々、こういう言葉を耳にします。「うちは中小企業だから、ブランドに力を入れる余裕はない」「うちはBtoBだから、ブランドより営業が重要だ」。
この言葉の背後にも、手放すべき前提があります。ブランドに取り組んでいる企業と、取り組んでいない企業がある、という前提です。力を入れている企業はブランディングに取り組んでいて、力を入れていない企業は取り組んでいないと区別しています。しかし、前回示したサイクルの論理で考えると、この区別は成立しません。ブランドに取り組んでいない企業は存在しません。意識して力を入れているか、放置しているかの違いがあるだけです。
中小企業であっても、顧客は体験を通じて感情の記憶を積み重ねています。BtoBであっても、担当者は接点のたびに何かを感じ、解釈し、「この会社は自分にとって何か」を形成しています。規模や業態にかかわらず、サイクルは回っています。「力を入れていない」という状態は、サイクルが止まっている状態ではありません。意図のないまま、サイクルが回っている状態です。
この認識に立つと、問いが変わります。「ブランドに取り組むべきか」ではなく、「私たちは今、どんなブランドを、意図せずにつくってしまっているか」という問いになります。請求書の文体、電話対応のトーン、納品時の梱包の丁寧さ、問い合わせへの返信の速度。これらは全て、顧客の感情の記憶に何かを刻んでいます。ブランド部門が管理していなくても、刻まれています。意識的に設計するか、無意識のまま放置するか。選べるのは、その二つだけです。
「ブランドに取り組んでいる企業と、取り組んでいない企業がある」という前提を手放したとき、ブランドは特別な部門の仕事ではなくなります。顧客と接点を持つ全ての仕事が、ブランドをつくっている。その認識が、組織のどこにいる人にも、自分の仕事がブランドにつながっているという感覚を与えます。







