ベテラン猟師の中原慎一さん
2025年度はクマによる人身被害が過去最多となった。狩猟管理学を専門とする酪農学園大学の伊吾田宏正教授は「26年度は落ち着きを取り戻すのではないかと考えていた。しかし、もはや予断が許されるような状況ではない」と言う。なぜクマは人里へ下りてくるのか。山で長年クマと向き合ってきたベテラン猟師が語る、食糧不足だけでは説明ができない「生態系の異変」とは?(フリーライター 伊藤博之)
予測を覆して
26年もクマ被害が多発
6月2日の朝、福島県福島市内で4人がクマに襲われて負傷し、同じ日に秋田県秋田市ではクマに襲われた可能性のある女性の遺体が見つかった。
秋田市では地元の猟友会が現場近くにいた体長約1mのクマを駆除。一方、福島市ではクマが工場の敷地内に居座り、緊急銃猟体制が敷かれたものの、警戒の目をくぐり抜け、工場の門を乗り越えて逃走したと見られる。
環境省が発表したクマ類による人身被害(速報値)は、2026年4月には全国で6件起きて6人が被害を受け、そのうちの1人である岩手県紫波町の女性が死亡。5月には全国で13件起きて14人が被害を受け、そのうちの3人が死亡している。
25年度は全国で238人が被害を受け、そのうちの13人が死亡し、国内における史上最悪の事態となったわけだが、今年度に入ってからも冬眠明けのクマによる被害が後を絶たない。
「2025年度が史上最悪の事態だっただけに、26年度は落ち着きを取り戻して、25年度ほどにはならないのではないかと考えていました。しかし、4月以降の被害状況を見ると、もはや予断が許されるような状況にはありません」と、狩猟管理学を専門とする酪農学園大学の伊吾田宏正教授は言う。
なぜ、冬眠明けのクマが山から人里や市街地に下りてきて、人身被害を及ぼすようになったのか。







