「蚊取り線香」はベテラン猟師も実践
鈴に慣れたクマがいたら?

 そうしたクマから人身被害を受けないためにすべきなのは、まずクマにこちら側の存在を気づかせることである。もともとクマは臆病な性格で、人間に対して強い警戒心を持っている。そこに人間がいるとわかれば、クマは自ら遠ざかっていく。

 そうしたクマが周囲を警戒する際に用いるのが嗅覚(きゅうかく)であり、移動中も時折頭を上下に振ってにおいを嗅ぐことで警戒を怠らない。

 ベテラン猟師の中原さんは、山中で渓流釣りをする際に蚊取り線香を焚(た)いて、クマが近寄らないようにしている。蚊取り線香を入れて服やベルトに装着できるホルダーがあるので、山に入ったり農作業をしたりする際には、それを利用するといいだろう。

 また、クマは聴覚が発達していて、小さな物音でも聞き取る。そこで「クマ鈴」が普及するようになったわけだが、「鈴の音色にクマが慣れてしまい、異音として警戒心を高めなくなった恐れがある」という指摘が出始めており、過信は禁物だ。

 アイヌ民族最後の狩人だった柿崎等さんは対談本の中で、クマが聞き慣れていない音として、ペットボトルを押して「ペコペコ」と鳴らしながら歩くことを勧めている。

クマ遭遇したら
「背を向けて走って逃げない」こと

 それでも万が一、クマと遭遇した場合はどうするか。セオリーとして大勢の関係者が繰り返し紹介しているように、もっとも大切なのは背を向けて走って逃げないこと。

 クマは逃げるものを追いかける。その場に立ち止まって、クマの目をじっと見据える。そして、クマの動きが止まったら、様子を確認しつつ、ゆっくりと後ずさりしながらクマとの距離を空けていく。

 子連れの母グマと遭遇した場合に注意しなくてはいけないのが、子グマと目を合わせないことである。子グマに目を合わせると、大切な自分の子どもに関心があるのだと思った母グマが、人に襲いかかってくる可能性を高めてしまう。

クマが近づくそぶりを見せたら
「ウォー」と腹の底から大声を出す

 立ち止まった人間の側にクマが近づくそぶりを見せたら、「ウォー」と腹の底から大声を出す。呼応して「グォー」とクマが威嚇の鳴き声をあげても、怯(ひる)まずに大声を出し続ける。