冬眠明けのクマが
市街地に下りてきた理由とは
その理由を探るヒントになるのが、北海道紋別郡西興部村のベテラン猟師の中原慎一さんの次の話だ。
「冬眠明けのクマは、当然のことながらおなかが減っているでしょ。でも、入っていた穴の周りにはまだ雪が積もっていて寒いし、餌となる植物の新葉や新芽があまりないんだよね。そこでどうするかっていうと、雪を掘り返すんだわ」
「ミズナラの木の下のくぼ地になったところには、前の年の秋に落ちたドングリの実がたまって雪に埋もれているんだよね。クマはその場所をちゃんと知っていて、それをほじくり返して空腹を満たすわけさ」
しかし、2025年秋の山の実なり調査の結果を見ると、西興部村をはじめ北海道の大半のエリアで、ミズナラは凶作だった。また、人身被害が相次いだ青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県の東北5県におけるブナの結実調査の結果は、軒並み大凶作であった。
つまり、クマたちはアテにしていた雪の下の餌にありつけず、餌を求めて山を下りてきたことが考えられるわけで、伊吾田教授も「その可能性はありえるでしょう」と言う。
交尾期では母グマや
争いに敗れたオスグマが人里へ
そして、この6月から7月にかけて伊吾田教授が特に注意すべき点として挙げるのが、クマが交尾期(5~7月)に入っていること。
オスグマは自分の子孫を残そうとする本能に駆られ、交尾をする相手のメスグマを探しに山中のあちこちを移動して回る。一方、1年のうちでもっとも餌が少ない時期で、アリやハチなどの昆虫も食べる。頭の中はメスグマと餌のことで一杯になり、次第に気性が荒くなっていく。
そうした最中、子グマをつれた母グマを見つけたオスグマがどういった行動を取るかというと、子グマを殺してしまうのだ。そして、子グマを失った母グマと交尾をする。それを避けようと、子連れの母グマは人里近くに下りてくる場合がある。
また、山中ではオスグマ同士によるメスグマの争奪戦が行われ、その争いに敗れたオスグマが押し出されるような形で山を下りてくることがある。そうなれば、人とクマが遭遇する可能性が必然的に高まる。







