そうすれば家族と同行できるし、期間の延長も弾力的に対応できる。

 もちろん日本の健康保険は絶対に使えない。だがそれが本来の医療ツーリズムというものではないだろうか。

自己負担を大きく抑える
高額療養費制度の威力

街中の喫茶店で

女性A「病気で長く入院していたよね。体調はどうなの」

女性B「ありがとう。乳がんで抗がん剤治療と手術をしたけれど、この後はホルモン療法と化学療法が続くの」

女性A「仕事にも復帰して大変ね。治療費もバカにならないでしょ」

女性B「高額療養費という制度があって支払いがだいぶん楽になっているの。とても助かるわ」

 改めて、悲しい現実をお伝えせねばならない。

 日本の健康保険制度は「合法ではあるが不適切な問題が存在し、将来的な社会保障費の値上がりや、自己負担増につながりかねない」状況にあるということである。これが現状である。

 誰が悪いのかを追及したいわけではない。医療機関に調査権限などないし、それぞれの立場の人間がそれぞれの職務をまっとうしているはずだと思うが、それでも抜け道や抜け穴は生じてしまうということを指摘したいのだ。

 そして、ここまで読まれてきて疑問には思われなかっただろうか。

 なぜここまでして医療ツーリズムの患者が日本の健康保険に入りたがるのか?なぜブローカーはリスクを冒してまで患者を日本の健康保険に入らせたがるのか?そもそもなぜブローカーは患者に高額な報酬を要求できるのか?

 上の会話に出てきた「高額療養費」制度がその疑問のキーポイントだ。

 日本の健康保険加入者の医療費はとても安く抑えられている。国民皆保険の理念は日本国内で完結する医療を、あまねく多くの住民に享受させること。

 健康保険証があれば基本的には3割の自己負担で済み、入院、手術をしたり高額な薬を使って治療費がかさんでも、「高額療養費」制度により自己負担額は大幅に抑えられる。

 高額療養費制度があるのは日本だけではない。韓国や台湾、ドイツにも同様の制度はある。