「早く投資を」の罠
命取りになる隠れ赤字
佐藤さんの現在の収入は、給与約16万円、年金約9万8000円、息子さんからの仕送り2万円を合わせて月約27万8000円です。
収入自体は現役時代と大きく変わりませんが、勤務時間が減ったことで自由な時間が増え、旅行や交際費など支出が増えやすい生活になっていました。家計を確認すると、「人生一度きり」という思いから、スマホとタブレットの二重契約や外食の日常化など、少しずつ支出が膨らんでいました。
そこでまず取り組んだのは、投資ではなく家計の見直しです。
旅行や友人とのランチ、お孫さんへのお祝いなど、大切にしたい支出は残しながら、通信費など見直せる支出は整理し、毎月少しずつでも黒字を残せる家計を目指しました。
老後だからといって楽しみを我慢するのではなく、長く続けられる形に整えることが大切なのです。 老後の3Kは、「お金」だけを増やせば解決する問題ではありません。健康を維持し、人とのつながりを保ち、その暮らしを支える家計を整えること。この3つが支え合ってこそ、安心した老後につながります。
投資はそのための有効な手段の一つです。しかし、投資を始める前に確認していただきたいことがあります。それは、「毎月の家計から、無理なく投資に回せるお金を生み出せているか」ということです。
資産形成では、「早く始めること」は大切です。しかし、「早く始めたい」という気持ちだけが先走ると、本来確認すべき家計の状態を見落としてしまうことがあります。スピードと慎重さは、どちらか一方ではなく、セットで考えることが大切なのです。
老後の資産づくりは、「何に投資するか」よりも、「投資を続けられる家計になっているか」から始まります。これは、おひとりさまでも、ご夫婦でも変わらない鉄則だと私は考えています。







