作品の「賞味期限」を延ばす
「推し活」と「感情経済圏」
まず金融会社は貪欲です。利益が出せない契約条件なら金を出さない。おいしいところを他社が全部持っていくのは許さない。そして勝負どころでは巨額の資金を投入する。IPという切り口でのふるまいがテレビ会社と全く違います。
ふたつめに今回フジが着目しているファンドはテレビ会社よりもIP価値を長期で見ます。「3カ月で視聴率がとれればいい」のではなく「ライフタイムで価値を上げるには」といったように思考します。よく「ファンドは短期志向だ」といいますがそのファンドは最低でも5年の投資回収期間で動きます。3カ月しか興味がないテレビ会社とは時間軸の長さが圧倒的に違うのです。
3つめに投資に対してあらゆる手を考えます。テレビ会社の事業部門は投資というと映画を製作して上映と配信で元をとるぐらいの発想です。しかしIP投資の世界では「推し活消費」をどう拡大していくかを考え、その育成手段を前提に投資をします。
この3つの点がフジテレビは圧倒的に遅れています。ドラマで言えば、春シーズン、夏シーズンといった3カ月単位で制作して基本はそれで終わり。有料配信サービスとしてFODがあるのですが、そのトップ10のうち9つまでは『続・続・最後から二番目の恋』や『波うららかに、めおと日和』など地上波ドラマの再配信だけ。
『ミステリと言う勿れ』のようにドラマの手ごたえがあったら劇場化して、それをもって事業化とすることで終わりというのがこれまでです。
清水社長が変えなければいけないと考えるのはこのあたりでしょう。フジの取締役会が注目するのはSBIが組成する1000億円ファンドへの参画が最重要な入り口になると考えられます。
「面白い作品を作りたいが資金が足りない」ところからテレビ局発のIPを大量に生み出していくという形にビジネスモデルを変えるためには、まず投資規模が重要であり、ファンドはその課題を解決します。
当然ながら投資をする以上、リターンを極大化する目的で契約や権利の持ち方、そして市場が大きい海外市場への進出の仕方についてはファンドがプロとしてディールをリードすることになります。
もうひとつ重要なのはSBIグループが抱える多様なメディアパートナーでしょう。世界的にメディアはオールドメディアからスマホアプリへとシフトしています。IPを大きくしていく観点で、オールドメディア発のIPをどう多様なアプリで育てていくのかがカギとなります。
SBIグループは「感情経済圏」という言葉をキーワードに挙げています。経済圏としてはIPについて「放送」や「映画化」だけでなく、「配信」「派生コンテンツ」「ライブイベント」を通じて感情を揺さぶり、「グッズ」「ファンクラブ」「NFT」などの課金対象について「決済」「金融サービス」までの収入を一体化させ幅広く換金化することを意味します。
目指すところとしては「スポンサーからお金をもらって番組を制作し放送する」のが収入の4分の1,残る4分の3は「たくさんのIPに対する推し活需要で消費者からお金を受け取る」形へビジネスモデルをシフトさせる未来でしょう。
SBIとの提携協議が実を結べば、どこまでいけるかは未知数ですが、少なくともフジメディアホールディングスの経営陣は正しい方向を見据えたしたたかな組織だと言えることだけは間違いないでしょう。







