つまり、私たちが「何もしていない」と思っている時間に、脳は裏側で膨大な処理をしているのです。この状態は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれています。これは、車でたとえるならアイドリングのような状態です。

 脳も同じで、ぼーっとしているときに、過去の経験を整理したり、未来の出来事をシミュレーションしたり、新しいアイデアにつながったりします。

 心理学の分野でも、同じような研究がなされています。

 ミシガン大学の心理学者、レイチェル・カプランとスティーブン・カプラン夫妻が提唱した「注意回復理論(Attention Restoration Theory)」では、人の注意力や集中力は、自然のなかで過ごすことで回復することが示されています。

 1995年に行った彼らの研究では、大学生を森や湖のそばを歩くグループと、街中を歩くグループに分け、その後に注意力テストを行いました。

 結果は明快で、自然のなかを歩いた学生のほうが、注意力・記憶力ともに高く、ストレス指標も下がっていたのです。木々の揺れや風の音、川のせせらぎなどの自然が、脳の緊張をゆるめ、判断や思考を担う前頭前野を休ませることが分かったのです。

「休む」とは、決して怠けることや、立ち止まることではありません。それよりもむしろ、次のアイデアやひらめきを促し、新しい課題に取り組むときの集中力や創造力につながる時間なのです。

質の良い休日は
イノベーションの源泉になる

 イノベーションを起こしてきた人たちは、「休むほど成果が上がる」ことをよく理解し、実践していた人たちだったともいえるでしょう。

 マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツも、休暇のなかで世界の流れを変える着想を得ました。

 彼の習慣のなかでもよく知られているのが、“Think Week(思考週間)”と呼ばれる一週間の休暇です。

 この期間、ゲイツ氏は人里離れた山小屋にこもり、電話もメールも遮断して、ひたすら本を読み、考えることだけに時間を使うのだそうです。