俺はまだ本気出してないだけ…と言い続ける人がいつまでも抜け出せない「思考のワナ」〈風、薫る第75回〉

シマケン、細い大黒柱になりたい

 主題歌明け。久しぶりに大山巌(髙嶋政宏)の登場だ。さすがに忘れている視聴者はいないと思うが、捨松(多部未華子)の夫。薩摩出身で、捨松の故郷・会津と戦っていたが、捨松と結婚し注目される。

 陸軍の軍人で、捨松は「また巌の名を借りてしまって」と恐縮している。「まだまだこの国では、女の生きる道は限られていて」と。

 夫の威光を借りてでも、目的を叶えようとする捨松を巌は「ファイター」と称える。そして、彼女のやりたいこととは何なのか? またしても『風、薫る』名物、お預けだ。

 その頃、シマケン(佐野晶哉)は、家でせっせと書評を書いていた。

 小説家を目指すのを辞めるのか?と心配する太一(林裕太)に、「稼ぎたいんだ」と言う。経済的な事情で看護婦を辞められないりんに代わって、稼ごうと考えているのだ。

「書評なら細い大黒柱くらいにはなれそうだ。そしたら、りんさん、無理しなくて――」

 シマケンとりんの相性がいいと思うのは、ふたりともなんだか他者の質問へのリアクションがヘンだからだ。

 太一も兄嫁の件ではちょっとおかしかったが、ここでは極めて理にかなったことを言う。いや、鋭い人間観察から生まれる名言の連打だった。

「そうか、お前、人のことが分かるのに、自分のことは分からないから、評論に向いてるのかもな」。名言!

「だいたい、お前、りんさんに細い大黒柱になってくれって頼まれたのか? もうそんな仲なのか?」。名ツッコミ!

「じゃあ、もし、りんさんが受け入れてくれたとして、りんさんのために小説、本当に諦められるのか?お前自身が納得いくもの、まだ一作も書けてないだろ。人のために、自分を諦められるような人じゃないよ。諦められるほど、まだ何もしてない」

 世界中の俺はまだ本気出してないだけと言い続けている人には刺さりまくる!「まだ本気を出していない」と思い続けることは、自分の可能性を信じているようでいて、いつまでも現在地から抜け出せなくなる思考のワナでもある。