『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第72回では、PEファンドの役割について解説する。
味方にいたら心強いが…
「ですから、着心地やデザインで今までにない新しい商品を生み出すことができるのです。これはまさに革命を起こす、夢のファスナーなのです」
いよいよ超極細ファスナーの商品化に成功したアパレルメーカー・T-BOX。代表の花岡拳は、早々に記者会見を開き、今後の展開についてアピールする。結果として株価は上昇し、一ツ橋商事の井川泰子らによるT-BOXの買収計画は失敗に終わる。
T-BOXの買収に失敗してやけ酒をあおる井川は、M&A担当の西田に次の一手を求めると、西田は外資系ファンドを用いた買収案を提案する。
一ツ橋商事が外資系ファンドに出資し、そのファンドがT-BOXの大株主となる。そして大株主としてT-BOXに無理な要求を突きつけたタイミングで、友好的に見せかけたTOB(株式公開買い付け)を宣言するというものだ。
ファンドは守秘義務があるため一ツ橋商事が出資者であることを開示できず、そもそも自社の利益になるのであればTOBも受け入れる。さらには成長が期待できる日本企業であるT-BOXを救うことになるので世論も応援するはず――西田はそう井川に提案する。
その直後、外資系ファンド・サンデーキャピタルがT-BOXの株式を5%以上取得したとして、大量保有報告書を提出するのだった。
ヘビのようなしつこさで権謀術数の限りを尽くし、ライバルを追い込もうと動く西田。冷静な参謀タイプは味方にいると心強いが、敵に回すと実に厄介だ。
決して「ハゲタカ」なだけではない、PEファンドの本質とは
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
物語はここから、T-BOXとサンデーキャピタルとの攻防が描かれることになる。
このサンデーキャピタル、のちに花岡からは「ハゲタカどもが…」とののしられることになるのだが、漫画が連載されていた2000年代のプライベートエクイティ(PE)ファンドをモチーフにしていることは明らかだ。
PEファンドとは、投資家から集めた資金で企業の株式を取得し、経営改善や事業再編、成長投資などを通じて企業価値を高めて売却や再上場によりリターンを得るファンドのことを指す。
当時日本では、それらのファンドの一部を「ハゲタカファンド」とやゆしていた。経営不振の企業を安値で買収し、事業を切り売りし、リストラをして利益を得ることをネガティブに見ていたからだ。
とはいえ現実においては、PEファンドの役割は多岐にわたる。事業承継や株式の非公開化、さらには構造改革の担い手として企業に関与して、現役の経営陣だけでは踏み切れない改革に資金と人材を入れる場合もある。
直近では、CARTA HOLDINGSの元代表である宇佐美進典氏がPEファンド「VOYAGE CAPITAL」の立ち上げを発表している。
そんな宇佐美氏が創業したCARTA HOLDINGS(創業時はアクシブドットコム、後にECナビ、VOYAGE GROUPへ社名変更)も、かつてはPEファンドであるポラリス・キャピタル・グループの支援を得ることでサイバーエージェント傘下からMBOし、東証マザーズ市場(現・グロース市場)への上場を果たした存在でもある。
外資系ファンドという「黒船」の存在でまたしても危機が訪れるT-BOX。サンデーキャピタルは早々に買収計画の発表へと動くのだった。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







