古参の労働者たちは、このタイヤメーカーのモットーは「丸く、黒く、すばやくつくる」だと冗談を言っていた。実際、ユニオンシティの労働者は自分たちの仕事に誇りを持っていた。2006年にはフォードやゼネラルモーターズなどに500万本のタイヤを納品したが、不良品として返品されたものは一本もなかった。彼らは、扱いにくいグッドイヤーの特殊な機械を動かせるのはユニオンシティの従業員だけだと自負している。「会社が品質確保に苦戦していた問題のあるタイヤでも、ユニオンシティなら生産できた。タイヤをユニオンシティに持ってくれば、短期間で市場投入可能な製品として開発できた」とUSWローカル878(編集部注/北米最大の産業労働組合USW[全米鉄鋼労働組合]の、テネシー州ユニオンシティ支部。グッドイヤーのタイヤ工場で働く従業員の労働条件や雇用を守る活動を行う)のリッキー・ワゴナー会長は語った。

 グッドイヤーは、ユニオンシティ工場を最新の施設とするために必要な投資を惜しまなかった。1998年には、6000万ドル規模の改修計画の第一歩として、最終仕上げと部品準備段階のための新たな設備を導入した。グッドイヤーの証券報告書によれば、工場の近代化はその後2年間続けられた。

 しかし、業界の潮流はユニオンシティに不利に働いていた。アメリカの生産者は、より大きなフレーム径で、新技術、燃費向上といった機能を備えた複雑なタイヤの製造に特化しつつあった。業界はユニオンシティで製造されていたような「単純で安価なデザインから意識的に距離を置く」ようになっていた。

 グッドイヤーの売上高は2010年、経済が緩やかに持ちなおすにつれて回復した。しかし同社の赤字経営は依然として続き、その年には2億1600万ドルの損失を計上した。2011年2月10日、同社はユニオンシティの工場を閉鎖する計画を発表した。

 年末までに実施予定のその計画により、年間8000万ドルのコスト削減が見込まれていた。しかし1900人の雇用が失われることにもなり、オビオン郡の失業率は8月には17パーセント近くまで上昇した。「当社のすべての工場はコスト面での競争力を持ち、持続可能な世界水準の生産性を示さねばならない。しかし、この工場はそうではない。その結果、市場の要求に応えられなくなってしまったのだ」とリチャード・J・クレイマー最高経営責任者は声明で述べた。