会社を信じた労働者に
突きつけられた現実
工場の命運が尽きかけている兆しは、数カ月、もしかしたら数年前からあった。それでも閉鎖のニュースは暴力的なまでの衝撃をもたらした。警備員が労働者をロッカーまで案内して私物を回収させ、工場から追い出した。
グリアは傷つき、激怒した。かつて彼は、新車のタイヤがグッドイヤー製ではないのを見つけると、その交換を勧めるほどに会社に忠実な社員だった。それだけに、ユニオンシティは劣悪な工場だというクレイマーのほのめかしは許せなかった。グリアは閉鎖の知らせを聞くとすぐに自分のオフィスに向かい、CEOにメールを送った。そしてこの工場に不採算というレッテルを貼るのは「嘘だ」とボスに向けて書いた。「おれはグッドイヤーとその経営陣にもっと期待していた」
グリアはまだ40代後半で、引退するには若すぎた。20年以上勤続していたため、約300マイル(480キロメートル)離れたアラバマ州ガズデンにあるグッドイヤーの別の工場への異動の資格があった。
「女房とおれは覚悟を決めた。女房は教師だ。テネシー州で21年間教鞭をとってきた。それで、おれは新しい職場で働き、そのあいだ女房は子供たちと一緒にこの州に残って退職まで働く。そうすれば、おれが最初に辞める時点で、子供の一人は高校3年生になっても転校せずにすむ。もう一人は高校1年生になるので、子供たちを学校から引き離さなくてすむ。それでおれたちは決めた。そう、難しい決断だった」と彼は語った。
グリアは、100年近い歴史があるガズデン工場に移り、12時間の勤務シフトで働いた。基本は11日間連続で働き、金曜日の朝7時に車に乗り込んで、5時間半かけてユニオンシティに戻る。妻や子供たちと週末を過ごしたあと、朝7時にアラバマに向けて出発し、その夜からまた長いシフトの勤務に就く。2020年にグッドイヤーがガズデン工場を閉鎖するまで、彼は9年間その生活を続けた。
「目をつぶっても運転できるくらいになった」グリアは言った。「同じことをしているやつはほかにも何人かいた。そして、帰宅途中で居眠りして事故を起こすやつもいた。だけど、そうするしかなかった」







