Photo:PIXTA
日産自動車が深刻な経営危機に直面している。固定費を賄いきれず、2万人の人員削減と7工場の閉鎖という大規模なリストラに追い込まれた。実際、この経営危機に関する報道が販売現場を直撃しており、現在も販売台数の減少圧力を跳ね返せない厳しい状況が続いている。競合他社がひしめく中、日産自動車がここから復活する姿は、正直なところ見えにくい。筆者は、1999年にカルロス・ゴーンCOO(当時)が「日産リバイバル・プラン」を発表した時代から同社を取材し続けてきた近岡裕氏。トヨタ自動車をはじめとする業績好調な他社との比較を通じ、日産自動車が衰退に至った真の原因に切り込む。 ※本稿は、近岡 裕『日産 最後のサバイバルプラン 転落の真因と復活への提言』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。
筋金入りの日産ファンも、日産から離れつつある
「父の遺言で『日産車にしか乗るな』って言われて、その通りにしてきたんです。でも、マツダ車を買っちゃいました。お父さん、ごめんなさいと言いながら買ったんです。毎日のように乗っています。とても快適です」
東京都の南端で神奈川県との境目に位置するベッドタウン町田市。取材を一通り終えて、駅に近い蕎麦居酒屋で軽く飲みながら自動車メーカー出身のコンサルタントと日産自動車についてあれこれと話していると、隣のテーブルに座っていた女性が話し掛けてきた。筆者らの話が耳に入り、気になって仕方がなかったらしい。「私にも一言言わせてほしい」とのことだった。それが冒頭の言葉だ。
クルマ好きで社会人になるとすぐに免許を取り、父親の影響で長年、日産車を乗り継いできた。歴代の愛車はスポーツカーの「フェアレディZ」。ところが、人生最後のクルマになるかもしれないと言うその女性が選んだのは、「ロードスター」だった。今でも日産ファンを自認しているものの、散々悩んだ挙げ句、最後はコスパ(費用対効果)が決め手となったという。父親の代からの熱心な日産ファンの1人が離れた瞬間だった。
ドイツ車の多目的スポーツ車(SUV)を所有している都内在住の編集者に、ぱっと思い浮かぶ最近の日産車を3つ挙げてほしいと筆者が頼むと、その編集者は「セレナ……、スカイライン、マーチ……?」と、なんとか絞り出した。だが、新しい車名が出てこないばかりか、日本でマーチの販売が2022年に終了していることも知らなかった。では、知っている日産車は?と聞くと、往年の車種はどんどん出てくるのに驚いた。
「スカイライン、ブルーバード、セドリック、グロリア、シーマ、セフィーロ、サニー。昔はトヨタ車よりも良いクルマがあって、周囲の多くの人が日産車に乗っていたという印象がある」(同編集者)
その編集者の父親はかつてブルーバードを乗り継いでおり、子供の頃から日産車の良さを体感していた。だが、大人になって自分で購入できるようになった今、選んだのはフォルクスワーゲンの「ティグアン」だった。内装デザインや装備の良さに引かれたのだという。輸入車にこだわっていたわけではなく、購入時の選択肢にはトヨタ車もあった。ところが、対抗車となるはずの日産車「エクストレイル」は選択肢に入るどころか、販売されていることすら知らなかった。







