「懐かしさ」と「新鮮さ」、そして「儀式」を意識する
イベントの設計で見落とされがちですが、実はとても重要な要素があります。それが「懐かしさ」と「新鮮さ」のバランス、そして、その場ならではの「儀式」です。
拙著『アルムナイ――雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値』の中でも書いたのですが、私たちは過去に接点があった人やものと再び出会う時、そこに懐かしさと新鮮さの両方を感じると好印象を持ちやすくなります。全てが変わってしまっていると懐かしむきっかけがなく、逆に何も変わっていないと「進化していない」という印象を与えてしまう。アルムナイイベントも同様で、在籍当時の記憶や共通体験を呼び起こしながら、同時に「会社も自分も成長している」という感覚を持ってもらえる設計が、参加したアルムナイの印象を大きく左右します。
そのために有効なのが、その企業ならではの「儀式」を取り入れることです。社内用語、オリジナルのかけ声、在籍中に共有していた合言葉や文化的な行為――こうしたリチュアルは、アルムナイが一瞬で「自分もここの一員だった」という感覚を取り戻すきっかけになります。一つ例を挙げると、ある企業のアルムナイコミュニティ発足パーティで、発起人が乾杯の際にその会社独自のかけ声を発した途端、参加していたアルムナイから一斉に「おおおー!」という声が上がり、それまでよそよそしかった会場の空気が一気にほぐれた、ということがありました。「懐かしさ」と「新鮮さ」のどちらが欠けても、アルムナイとの距離は縮まりません。イベントのプログラムを設計する際には、在籍時の共通体験を想起させる要素と、退職後にお互いがどう進化したかを共有できる要素の両方を意識して組み込んでみてください。再雇用やビジネス協業の話は、そういった瞬間――「懐かしさ」と「新鮮さ」を共有した後のほうがずっと深まりやすいのです。
本連載で繰り返してきた『急がば回れ』は、アルムナイイベントにも当てはまります。小さく始め、懐かしさと新鮮さを丁寧に重ねていく。その積み重ねがアルムナイとの関係を再構築し、やがて、ビジネス協業や再入社、そして、ファン化という成果へとつながっていくはずです。









