仕事中にお腹が減った。集中力も落ちてきた。そんなとき、チョコレートやキャンディーなどの甘いものを口にする人は多いだろう。「少しくらいなら問題ない」と思うかもしれない。しかし、元オックスフォード大の医学研究者で、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏によれば、仕事中の「ちょっと一口」には、意外な落とし穴があるという。いったい、体の中で何が起きているのだろうか。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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仕事中の「ちょっと一口」が危ない
午後3時。
仕事をしていると、少しお腹が減ってくる。
集中力も落ちてきた。
そこで、机の引き出しからチョコレートを一つ取り出す。
あるいは、職場に置いてあるキャンディーを口に入れる。
「これくらいなら大丈夫」
そう思っている人も多いだろう。
しかし、元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は、こうした「間食」に注意を促している。
パン、ご飯、麺、スイーツやスナック菓子。
そういった食事には、糖分や糖質が多く含まれていますが……
「糖」を摂りすぎると脳が崩壊していくのです。
――『糖毒脳 いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』(下村健寿・著)より
糖の怖さは「カロリー」だけではない
もちろん、問題はカロリーだけではない。
より注意したいのが、「インスリン」だ。
糖を摂ると、血糖値を下げるためにインスリンが分泌される。
通常、3食だけを食べていれば、インスリンは食事のたびに上昇し、食事と食事の間には下がる。
ところが、仕事をしながらチョコレートを食べる。少し経ったら、キャンディーをなめる。またお腹が減ったら、スナック菓子をつまむ。
そんな食べ方をしていると、体の中では大きな問題が起きる。
間食や「ながら食べ」をしてしまうと、1日中インスリンが出っぱなしの状態になってしまいます。当然、肝臓や筋肉などの末梢臓器は、持続的に大量のインスリンにさらされることになります。
こうなると、肝臓や筋肉でインスリン抵抗性が進行してしまいます。
――『糖毒脳 いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』(下村健寿・著)より
インスリンが出続けると、やがて体はインスリンに反応しづらくなる。
これが「インスリン抵抗性」だ。
そして下村氏によれば、このインスリン抵抗性が、認知症とも深く関係している。
「脳を守る働き」を弱めてしまう
インスリンというと、「血糖値を下げるホルモン」というイメージが強い。
しかし実は、脳にとっても重要な役割を果たしている。
脳の中でインスリンは、「学習」や「記憶」を司る脳神経細胞同士の情報伝達をスムーズにしたり、脳神経細胞そのものを保護したりする、極めて重要な働きをしていることがわかってきたのです。
さらには、脳内のインスリンは記憶や学習をスムーズにすすめるだけでなく、アミロイドβなどによる攻撃から脳神経細胞を守る役割も果たしています。
インスリンが脳の中でその力を十分に発揮できていれば、脳神経細胞が守られ、アルツハイマー病は発症しにくい、あるいは進行しにくいということになります。
血液中の血糖値が上昇する「糖尿病」も、脳の機能が低下する「アルツハイマー病」も、ともに「インスリンが十分な力を発揮できない」という、まさにインスリンの異常が根本的な原因として深く関わっていることが明らかになったのです。
――『糖毒脳 いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』(下村健寿・著)より
お腹が減るたびに甘いものを口にする。
その「ちょっと一口」を何度も繰り返していると、やがてインスリンの効き目が落ちてくる。
それが、脳を守る働きにも悪影響を及ぼす可能性があるのだ。
チョコレートを一粒食べたから、すぐに認知症になるわけではない。
しかし怖いのは、「食べた」という意識すらないまま、毎日のように糖を口にし続けることである。
仕事中にお腹が減ったら、反射的に甘いものへ手を伸ばす。
まずは、その習慣を見直すことから始めたほうがよさそうだ。
(本稿は、下村健寿著『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容をもとに作成した記事です)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








