好物を「買わない」ことが
減量の最善策

 その認識や意識は、自制心、コントロール力です。「自分は自制心に欠ける」という人は多いかもしれません。しかし、食欲の正体の脳の働きとしくみを知っていることは「すでに自制心あり」です。

 そして、それだけで、行動は変えることができるのです。その変容についてはいまや、医学、臨床心理学、社会心理学、行動経済学など多くの学問分野で証明されています。

 自制心やコントロール力、理性は、脳の「前頭前野」という部位が担っています。食べすぎを防ぎたいときは、前頭前野が視床下部の摂食中枢を抑えるように働きます。

 逆に、おなかがすいているときは生存のために、前頭前野によるコントロールよりも視床下部の摂食中枢が優先的に働きます。そしてGLP-1やGIP、インスリンが働いて、食べたものがエネルギーに代謝されるという、体にとって自然な活動がくり返されます。

 しかし、デザートやラーメンを別腹だと思って食べてしまった場合は、前頭前野でのコントロールが一時的にうまく働かずに「過食」している状態です。

 これらから、別腹による過食を防ぐには、ドパミンの分泌が増える前に、「好物を目にしない」ことが効果的だといえます。好物を見なければ、過去の条件付き学習は想起されにくいのです。

 減量したいときは、そもそも好物を「買わない」ことが最善策です。しかし、もし手にしてしまったなら、「すぐに見えないところに隠す」のが有効です。食欲をアップする情報、すなわち好物を視界に入れないことは、ドパミンの過剰な分泌を防ぐ行動です。

 少なくとも、食卓や仕事机に、好物のお菓子やパン、即席麺などを置かないようにしてください。

締めのラーメンを
食べそうな日の対策

 患者さんから「仏さんのお供えのおさがりを食べてしまう」という相談を受けたときには、「お供え物は、小分けの長期保存タイプを選び、周囲の人と分け合うか、自分の適量分だけを購入しましょう」と答えました。そのチョイスの行動こそが自制心です。

 食べすぎてしまいそうなとき、「いまこれを食べると数時間後の体重はどうなるか。その体重をもとに戻すにはどれくらいの運動と時間が必要か。このデザートやラーメンは本当にいまの自分の健康にとって必要なのか。脳の報酬系が快感を得たいだけではないのか」と、自問自答をくり返しましょう。

 紙に書いて食卓の周辺に貼っておくのも効果があります。効力がなくなってきたら、書き直してください。

『減量の科学』書影減量の科学』(福田正博、集英社)

 別腹現象による過食の予防について、『胃は歳をとらない』(集英社新書)の著者で兵庫医科大学消化器内科の前主任教授、消化器病指導医・専門医の三輪洋人氏は、同書でこう述べています。

「夜に飲み会や会食の予定がある場合は、『今日はデザートやシメのラーメンまで食べるかもしれない』と朝から想定しておき、朝食や昼食で少しカロリー摂取を減らしておきましょう。または、その飲み会や会食時の一食全体でのカロリーが過多にならないように、料理やごはん、パンを食べる量を少しずつ減らすといった工夫をしましょう。

 こうした食事どきの工夫はそう難しいことではありません。数回くり返すと、『慣れました。胃も腸も軽くなって、食べ過ぎた罪悪感もなくなるので楽に続けられる』という患者さんも多いのです」

 この少しの意識の持ちようや実践は、脂質異常症、糖尿病、高血圧を予防し、生活習慣病対策になることは言うまでもありません。