後悔せず働きたい。自分らしく働きながら結果も出すためのヒントを、サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した長久允氏の思考から辿ります。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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若い頃の自分に恥ずかしくない仕事を
「あの頃はよかった」という言葉はよく聞きます。
若かった頃、新しい仕事を任された頃、初めて成果を出した頃、チームで夢中になっていた頃。あの頃は、世の中も上向きで、みんな必死で情熱があったと。
ですが本当に、「あの頃」のほうがよかったのでしょうか。
現実には、今のほうが経験も積んで仕事もやりやすくなっているはず。なのになぜ、そう感じるのか。
同時に、将来そう感じていたくないなとも思う。若い頃の自分に恥ずかしくない仕事をしたい。
キャリアの後悔というと、多くの人は「あのとき転職しておけばよかった」「もっと勉強しておけばよかった」といった、大きな選択の失敗を思い浮かべます。
けれど、もっと静かに積み重なる後悔もあります。
それは、身の入らない仕事を続けてしまった後悔です。
自分をすり減らしてはいけない
本当は大事だと思えていないのに、大事なふりをする。
心が動いていないのに、器用にこなす。
納得していないのに、場に合わせてそれらしい答えを出す。
そういう働き方は、すぐには問題にならなくても、少しずつ自分をすり減らしていきます。
長久允さんの『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』に、こんな記述があります。
私の脚本は、すべて私が思っていることで構成されています。自分が責任を持ってしゃべれる内容を俳優に発してもらっているという状態です。
大人に対して、絶望に対して、お金に対して、性に対して、社会に対して、生きるということに対して、私が思っている本当のことしか書いていません。そこにカッコつけや、誤魔化しがあると、バレてしまう、と感じています。
――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう脚本の教室』p228より
これは、すべての仕事に通じることでしょう。
嘘っぽいことはバレる。
うまくやっているつもりでも、周りは気づくものです。
すると段々、人も離れていく。そして、「若い頃のほうがよかった」と思い始める。
仕事を続ける上で大切なのは、特別な才能を持っていることではなく、自分に嘘をつかずにいることなのかもしれない。
自分に嘘をつかないことが、世のためにもなる
もちろん、いつも好きなことだけを仕事にできるわけではないでしょう。立場や事情もある。場面によって面倒な作業や調整が避けられないときもある。
ですがどんな仕事にも、どこかには自分が本心から向き合えるポイントを見つけられるかもしれない。
長久さんはこうも言います。
作り手であるあなたが、衝動的にときめいたものがあれば、それを見た誰かの心も掴むはずですから。
――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう脚本の教室』p137より
その実例として「プールに金魚を放った、どこにでもいる退屈さやあきらめを抱える若者」の物語が、世界に通用したのですから。
私の実体験ではなかったけれど、その「退屈さ」と「抜け出せないとあきらめる気持ち」こそ、私の感じている「本当の気持ちそのまま」を脚本に落とし込んだものでした。
だから私は、どんな「あなた」だったとしても、本当に感じていることを脚本に書いたほうがいいと思うのです。
――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう脚本の教室』p226より
自分に嘘をつかない仕事は、結果的に人のためにもなります。
自分が納得できるまで考えるから、仕事の精度が上がる。自分の心が動いているから、言葉や企画や商品に力が宿る。本気でいいと思えるものを出すから、受け取る人にも熱が伝わるのです。
そうすると良いものが世にあふれ、自分自身も「今が楽しい」と思えるのではないでしょうか。
キャリアで「あの頃はよかった」と後悔しないために最優先で変えるべきなのは、肩書きでも会社でも職種でもなく、自分の心に嘘をつかないと決めることなのかもしれない。
へたでもいい。それはきっと「本当はそれほど作りたいわけではない物語」なんかより、千倍素晴らしいものになるはずだから。
――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう脚本の教室』p199より







