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JR東日本が好調です。2026年3月期の売上高は約3兆847億円、前期比6.8%増で5期連続の増収を達成しました。会社発足以来の過去最高を更新したことになります。
人口減少、リモートワークの定着、地方路線の厳しい収支などを背景に、「鉄道は成熟産業」と見られがちな中で、同社はなぜ売り上げを伸ばし続けられているのでしょうか。好調な数字の裏側に、同社が向き合わなければならない変化はないのでしょうか。(グロービス経営大学院教員 太田昂志)
売り上げは過去最高…なのに利益はコロナ前に届かない
まず、現在地を確認しましょう。
コロナ前のピークだった2019年3月期、JR東日本の売上高は約3兆20億円、営業利益は約4848億円、純利益は約2952億円でした。
これに対して2026年3月期は、売上高こそコロナ前を超えて過去最高ですが、営業利益は約4143億円、当期純利益も約2478億円と、いずれもピーク時の8割台にとどまっています。
実は、売り上げはコロナ前を超えた一方で、利益はまだ当時の水準に戻りきっていないのです。

その理由は、さまざまです。人件費や修繕費の上昇、減価償却費などの固定的な費用の増加、高輪ゲートウェイシティをはじめとする大型開発への投資など、複数の要因が重なっています。
そのなかでも、より構造的に重い意味を持つのが、定期収入の戻りの鈍さです。
鉄道運輸収入を見ると、回復を牽引しているのは、新幹線、レジャー、インバウンドなどの「定期外」需要です。2026年3月期の鉄道運輸収入は1兆8485億円、前期比4.5%の増加でした。なかでも新幹線は通期収入が6174億円で、前年比5.9%増と好調でした。
一方で、かつて鉄道収入の安定性を支えてきた「定期」は、まだ戻りきっていません。
2026年3月期の定期収入は4377億円。コロナ前の2019年3月期の5063億円と比べると、8割台半ばの水準にとどまります。
背景にあるのは、リモートワークの定着によって、毎日決まって電車に乗る人が構造的に減ったことが考えられます。移動需要は戻りつつあるにもかかわらず、その中身はコロナ前と同じではありません。
ここに、鉄道ビジネスの難しさがあります。
鉄道会社のビジネスは、電車の本数、安全点検、駅運営などにかかる費用が、利用者が少なくても大きいため、毎日どれだけ安定して乗ってもらえるかが利益を左右します。
そのなかで、前払いで毎月確実に入る「定期」は、その重い固定費を支える“底荷”のようなもの。定期券は、通勤や通学などで同じ区間を繰り返し利用する人が、1回ずつ運賃を払うより割安な金額で、数カ月分をまとめて前払いする仕組みです。
鉄道会社にとっては、1回あたりの単価は下がりますが、毎月ある程度決まった収入が先に入るという価値がありました。その“読める安定収入”が、線路や駅、車両など、利用者が少なくてもかかる費用を支えていたのです。
ところが、その“底荷”は現在、コロナ前の8割程度にとどまっています。穴を埋める定期外は、曜日・季節・為替で需要が大きく振れる収入です。しかもピークに備えた車両や人員は、閑散時にも簡単には減らせません。
だから乗客の量を取り戻しても、定期が分厚かった時代ほどには利益の“安定性”は戻りにくいのです。
移動は戻った。しかし、収入の中身が変わり、費用構造も重くなっている。さらに、今後は人口減少などによって鉄道事業を取り巻く環境も変化していくことが見込まれます。
だからこそ、JR東日本は 「鉄道会社」にとどまらない変革を迫っているのです。そして、その先には“競合”すら変わる未来があります。







