「転職の会社なのに?」ビズリーチが「社員を辞めさせない仕組み」に投資する驚きのワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

今、HR(人材)業界で圧倒的な高収益を叩き出しているのが、ビズリーチを運営するビジョナルです。2025年7月期、同社は売上高・営業利益ともに20%増という大幅な増収増益を達成しました。しかし、その成功の要因を「転職市場が活況だから」と片付けてしまうのは早計です。同社の戦略を読み解くと、そこには逆転の発想を梃子にした強固な連鎖の仕組みが見えてきます。(グロービスファカルティ本部 開発基盤チームマネージャ/グロービス講師 松村真美子)

ネットワーク効果が生む「囲い込み」
後発でも王者を脅かせた逆説のメカニズム

 かつての人材紹介市場では、大きく二つのビジネス構造が主流でした。一つは、企業の代わりに候補者を探し、入社が決まった際に成功報酬を得る「転職エージェント」、もう一つは、企業から求人広告料をもらって情報を掲載する「転職サイト」です。

 リクルートをはじめとする主な転職サービス会社は、この両方の事業を展開しています。人材を採用したい企業と、職を探したい求職者の間の「情報の非対称性」を利用し、その溝を埋めることが彼らの付加価値だったのです。

 後発で業界に参入したビズリーチは、この構造を逆手に取った大胆なプラットフォーム戦略を展開しました。ビズリーチは、プラットフォームを通じて企業が求職者に直接連絡を取ることを可能にする「ダイレクトリクルーティング」を解禁したのです。

 もし既存の転職サイトを運営する会社が同じことを行えば、採用企業は求人広告料を払ってまで情報を掲載してくれなくなりますし、自社のもう一つの柱である転職エージェント事業の仕事を奪うことにもなってしまいます。ビズリーチはこのジレンマを上手く突きました。

「転職の会社なのに?」ビズリーチが「社員を辞めさせない仕組み」に投資する驚きのワケ出典:ビジョナル 2025年7月期 通期決算説明資料より抜粋
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 彼らの戦略が秀逸だったのは、求職者と企業に加え、本来は競合であるはずの紹介会社やヘッドハンターもこのプラットフォームの参加者として取り込んだことです。それにより求職者、企業、ヘッドハンターの3者の利便性を高めることに成功しました。

 ここで触れておきたいのが「ネットワーク経済性(ネットワーク効果)」です。ネットワーク効果とは、利用者が増えれば増えるほど、そのサービスの価値が指数関数的に高まる性質を指します。

 ビズリーチは、「ダイレクトリクルーティング」という業界構造の盲点を突き、他社がジレンマに悩む間に参加者をネットワークに囲い込むことに成功したのです。

 しかし、ビズリーチの戦略は転職支援だけでは終わりません。同社は今、「社員を辞めさせない仕組み」にも投資を進めています。その裏には、意外な理由が隠されていました。