AIに仕事を奪われる、と言われて久しい。だが危ういのは、能力の低い人ではない。むしろ知識があって、論理的で、周囲から「頭がいい」と思われてきた人のほうだ。正しいことを、速く、整った形で言う。それは、AIがもっとも得意とする仕事だからである。アパレル史上最年少で上場した株式会社yutori社長・片石貴展氏が新刊で指摘するのは、頭のいい人ほど深くはまり込む、たった一つの落とし穴だ。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局/淡路勇介)
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正しいことを言おうとした瞬間、勝負はついている
頭はいいのにAIに勝てない人。
その特徴は、正しいことを言おうとしてしまうことである。
会議で意見を求められる。エビデンスを添えて、論理的に、結論から。うまく話せたはずなのに、なぜか場は動かない。そして終わったあとに、こう言われる。
「あの人、頭はいいんだけどね」
正しさは、もう希少ではない。
正しく整った言葉なら、AIが一瞬で、いくらでも出す。正しさで勝負を挑んだ時点で、負けは決まっている。
頭の中は、いつのまにか他人の言葉で埋まっている
なぜ、正しいことを言おうとしてしまうのか。片石氏が原因を見るのは、能力ではなく、頭の中の状態だ。
「エビデンスは?」「それ、意味ある?」「で、何が言いたいの?」
こうして、現代を生きる私たちの頭の中は、他人の言葉(それっぽい言葉)で埋め尽くされるようになりました。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より
タイムラインに流れてくるのは、だれかが美しくパッケージングした「人生を好転させる5つの習慣」のような言葉たち。
無料で情報を得る代わりに私たちが差し出しているのは、時間と注意力だけではない。自分の心の声も、一緒に手放しているのだ。
AIには、自分がない
それがAIです。AIの作る文章が人の心を動かさないのは、借り物の言葉の集積だからです。それは正しいかもしれないが、人の心を動かさない。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より
AIの弱点は、性能ではない。
自分がないことだ。
その日食べたものの味も、上司の一言に感じた居心地の悪さも、AIは持っていない。
持っていないから、どこかにある言葉を集めて組み替える。正しいけれど、体温がない。
問題は、他人の言葉で頭がいっぱいの人がやっているのも、まったく同じ作業だということである。似ているのではない。同じことをしている。だから、勝てない。
勝つ方法があるとすれば、速く正しくなることではない。
他人の正解を探すのをやめて、自分が何を感じたかに戻ることだ。片石氏は、自分の身体感覚に従って生きている人の口から出る言葉は、絶対に借り物にはならない、と書く。
拙くてもいい。整っていなくてもいい。
その人が、その人の体で感じたことだけは、AIには生成できない。頭のよさの価値が下がっていく時代に最後まで残るのは、正しい一言ではなく、その人にしか言えない一言だ。
(本稿は、『自分の言葉で話せるようになりましょう。』の一部を引用したオリジナル記事です)









