IBMのCEO、AIからの逃げ場なしIBMの量子コンピューターに搭載される次世代デバイスが開発されているテストシステム
PHOTO: CLARK HODGIN FOR WSJ

 米 IBM のアービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)が直面する問題は、物事の進むスピードが速過ぎると同時に遅過ぎることだ。同氏はその間で板挟みになっている。人工知能(AI)革命において、これは最悪の立場だ。

 クリシュナ氏はハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)の台頭に対応してハイブリッドクラウド戦略に大きく賭ける一方、次世代技術の量子コンピューティングにおけるIBMの役割を長年にわたって投資家に売り込んできた。量子コンピューティングは3年から5年で実用化できると同氏は述べている。

 先週のような日がこれ以上続くようであれば、3年後のIBMを想像することは難しい。5年後なら、なおさらだ。

 IBMが4-6月期(第2四半期)の業績が予想を大幅に下回ると発表したことを受け、 14日の株価は25%下落した 。これにより、IBMのソフトウエア事業がAIに脅かされているだけでなく、従来型製品の販売も困難になっていることが明らかになった。今のIT市場では、AIの台頭によって企業支出がIBMから遠ざかっているためだ。

 これは、AI革命をどう乗り越えるかを模索する多くのCEOたちにとって悪夢のような状況だ。巨大テック企業のクラウド事業がAIへの適応を後押しする一方、クリシュナ氏のように、新興のAI専門企業との競争に追いつこうとしながらも既存事業の管理に追われている経営者は多い。

 これは過去のテクノロジー革命の波の中で他の業界で繰り返されてきたおなじみの光景だ。メディア・音楽・自動車といった業界が思い浮かぶ。いずれのケースも、中間路線の戦略で成功することは難しいことが示されている。多くが試みるが、うまくいくのはわずかだ。

 IBMの現在の苦境は、かつて自然言語コンピューター処理システム「ワトソン」でAIの最前線に立っていたことを考えると、特に痛ましい(ワトソンは人気クイズ番組「ジェパディ!」で優勝した)。IBMはそのリードを無駄にし、低迷を続け、現在ではアンソロピックなどのAI開発大手に大きく後れを取っている。アンソロピックは主要モデル「クロード」を生み出し、かつてIBMを支配的な存在にした法人顧客を狙っている。