院長と柴田の関係が明らかに
捨松は熱心に社会活動を行っているが、すべて夫の大山巌(高嶋政伸)の力を借りている。彼女自身ももともと認めていて、権威ある大山の妻となることで鹿鳴館に出入りして、顔を売り、自分のやりたい活動を実現させてきた。
だが「それではこの社会で女の地位を上げることはできないと気づいたの」と厳しい現実を語る。
「皆が思うのは、いいなあ、名士の奥様は。金持ちの奥様なのに慈悲深いなあ、といったところでしょう。私はいい人になりたいのではなく、この社会を変えたいのに。ですが直美さんがやることは。たとえた小さな歩みでも。新しい女の生き方につながります」
そう背中を押された直美は、病院を辞めることを決意。さっそく院長(筒井道隆)に辞めると伝えに行く。展開早っ。
院長は、柴田から報告を聞いて、派出看護をやることを知っていた。手回しよすぎる。
直美が柴田に「聞こえるように話したのでは」と、さらっと言う院長。そして「賢明な判断ですね、承知しました」とあっさり。
副院長(森田甘路)はあたふた。そりゃあそうだ。直美はいまや病院の看護婦のリーダー格。りんも辞めているわけで人手も不足しているだろう。でも直美はちゃんと引き継いでから辞めると言う。当たり前!
院長はものわかりがやたらといい。大学病院は、医学の研究、発展のための病院だが、貧しさゆえ散る命を救う者もいなければならない。それを直美が選択するのを肯定し、めぼしい町医者の連絡先を直美に託す。
「どちらの医も仁術なり」
なんか良さげなことを言って送り出す院長。思わせぶりに悪そうな感じも出しておきながら、結局、道理のわかる人?
そしてそんな院長と柴田は幼なじみで……。なんじゃそりゃ。
院長と柴田が通じているのを黒川から聞いて知っていた直美は、柴田から院長に伝わるようにわざと聞こえるように話したのだ。そうすれば院長があらかじめ覚悟してくれて話が早い。現に町医者リストを用意してくれていた。それが直美のプランだったようだ。
辞めるにあたってもめ事がないように根回しする直美に、ヨシ(明星真由美)は言う。
「そういうのもできるようになったらどこいっても取り締まれるよ」
遊郭のやり手婆もある意味、取締のようなもの。取締とやり手婆。
捨松がなれない、夫に頼らず生きるたくましき女たちである。
この回の捨松の悩みは興味深い。女性のなかには、力のある伴侶を選び、「○○さんの奥さん」という立場を社会活動の足がかりにする人もいる。でもそれを捨松のように良しとはしない人もいて、傍から見たら得しているようで、内心これでいいのか悩んでいる人もいるのだ。
筆者のまわりにも(地位のある)夫の話題を折に触れ持ち出す人もいれば、決して話題に出さない人もいる。なかには公私ともに「パートナー」として同志的な活動をしている人たちもいる。夫の姓を仕事上名乗らない人は夫と自分を切り分けたい意思の現れのように感じることも。
夫の力も利用できるなら利用して、なおかつ、自立した人間として自己実現できる。そんなことが当たり前にできる世の中に令和はなっているだろうか。明治の頃より少しは進歩しているだろうか。
それにしても、最近の直美、あらゆる人に肯定されまくっているなあ。









