なぜか昇進する人の「AIの使い方」・ベスト1Photo: Adobe Stock

これさえ使えば間違いないという「最強のAI」を探し求め、すべての作業をひとつのツールで済ませようとする人がいる。しかし元マイクロソフト役員で、働き方分析の専門家・越川慎司氏によると、「昇進する人の特徴」はまったく別だという。ビジネスパーソン17万人の行動記録と評価データの分析結果からわかった、その答えとは?(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

「一番いいAIを使いたい」という誤解

――仕事にAIを取り入れた方がいいのはわかっているのですが、種類が多くて悩んでいます。結局、どれを使えばいいんですか?

越川慎司(以下、越川) 次々と登場するAIサービスを前に、「結局どれを使えばいいんですか?」という質問を私もよく受けます。

この問いの背景には、「最強の1つを見つければ、それだけ使えばいい」という発想があります。

しかし、期待されている人たちは違いました。
彼らの65%が、2種類以上のAIサービスを日常的に併用していたのです。これは一般社員における比率の約6倍です。

各AIの「クセ」を見抜いて使い分ける

――では、何を基準に使い分ければいいのでしょう?

越川 彼らは得意分野ごとに各種AIを使い分ける戦略を取っていました。

ある外資系コンサルティング企業のマネージャーは、AIの使い分けをこう説明してくれました。

「ChatGPTは発想を広げるブレスト相手として優秀。Claudeは長文の分析や要約が正確。Perplexityはリサーチ用途で信頼できる。Geminiは最新情報に強い。1つのAIにすべてを求めるのは、料理人に“包丁一本ですべて作れ”と言うようなものです」

――なるほど。そう言われると、納得できますね。

越川 重要な企画書を作成する際、3つのAIに同じ質問を投げて回答を比較するという人もいました。

そのため、期待されている人たちの78%が、各AIサービスの特徴を2週間に1回の頻度でチェックしています。

日々アップデートされるAIの変化を把握することで、常に最適な使い分けを維持しているのです。

「使い分け」を始めた人の61%が仕事の質向上を実感

――実際に、AIを「使い分ける」と、どのような効果があるのでしょうか?

越川 8社168名を対象にした検証では、複数のAIを使い分け始めた社員の61%が「仕事の質が上がった」と回答しました。

実際、385社の調査では、各AIの強みと弱みを理解して使い分けている人は、単一のAIだけを使う人に比べて回答の精度が5%以上高いことがわかりました。

――効果が数値に表れているのは驚きですね。

越川 ええ。「たった5%」と思われるかもしれませんが、5%はビジネスの現場では大きな差です。

100件の提案のうち5件が追加で採用される。
100通のメールのうち5通がより最適な表現になる。

この積み重ねが、年間を通じて見れば圧倒的な成果の差につながっているのです。

越川慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー 代表取締役社長
日系通信会社や外資ベンチャーなどを経て2005年にマイクロソフト米国本社へ入社。その後、日本マイクロソフトの役員としてExcelやPowerPointなどの事業責任者を務める。2017年には週休3日・複業を実践する会社、株式会社クロスリバーを設立し、800社以上の働き方改革を支援。年300回以上提供する企業向けオンライン講座の受講者満足度は平均96%、行動に移す受講者は95%以上。著書は『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)や、『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など33冊、累計130万部。NHK、TBS、テレビ東京、PIVOT、NewsPicksやReHacQなどメディア出演多数。