テレビ業界で物差しとなるのは視聴率です。視聴率を分析すると視聴者層はつかめますが、誰が見ているのか、その顔までは見えてきません。しかし、配信だったらよりパーソナルなデータを入手できる。そのおかげでお客さんの顔が見え、内容を通して、インタラクティブなモノづくりが可能になる。正しいターゲットに届けば、より多くの人に見てもらえることが分かったわけです。

配信によって日本のドラマが
海外進出する時代が到来

 こうして、2010年代前半に配信という新しいフィールドが大きく広がっていることに私は気づきました。また、Googleの若いアナリストのような、放送業界にはなかった発想を持つ人たちと出会うことで、新たなコンテンツづくりの現場に入り込んでいけるようになっていきます。

 つまり、これは私にとって配信ビジネスの原型となるような体験だったわけです。データ分析によってターゲットを洗い出し、そこに届ける内容を作る。まったくもって、配信プラットフォームがやっていることと一緒だったんです。

 私が『テラスハウス』に携わったのは初期の段階だけでしたが、その後、コンテンツ自体は成長を遂げていきます。東宝さんからは映画化の話が持ち込まれ、2015年に『テラスハウス クロージング・ドア』が製作されます。

 そして2015年にはネットフリックスが日本に参入した際のコンテンツとなりました。当時は配信プラットフォーム側も製作環境が整っているわけではなかったので、番組制作のノウハウを持つテレビ局との協同作業を望んでいました。日本市場に参入したばかりのネットフリックスが、最初に選んだクリエイティブパートナーの1社が、私たちフジテレビ。そこで望まれたのが『テラスハウス』でした。ここでのグリーンライトも鮮明に覚えています。

 ネットフリックスで配信されるとなると、世界各国で番組が視聴されることになります。2017年12月から配信された軽井沢編、『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』は、アメリカのタイム誌が発表した『2018年のベストテレビ番組10(The 10 Bset TV Shows of 2018)』で6位に選出されました。

 それまで日本で製作されたドラマは海外に届ける手段が極めて少なかったところに、いきなり世界が相手になって、しかも評価されるチャンスも出てきた。「これはどえらい時代になってきた」と思いましたし、日本のクリエイターとしては最高の時代を迎えつつある。そう思いました。

 私にとっては、従来のテレビ業界の手法が勘に頼っていたものに過ぎず、Googleのアナリストが示してくれたデータマーケティングによって、視聴者の顔が具体的に見えてきたという貴重な知見を得られ、この体験がのちに自分の配信ビジネスにも生きることになるわけです。