テレビ離れを加速させた要因が、ネットフリックスやAmazonプライム・ビデオといったビデオ・オンデマンド・サービスである。NHKの視聴者離れも例外ではない。NHKは“黒船”にどう立ち向かうのか。特集『変局!岐路に立つNHK』(全8回)の#7では、NHKが4月以降に投入する予定の大型番組を明らかにするほか、対抗策について検証する。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
20代の約半数が有料サービスを利用
さらにNHKと契約するのか
日本のテレビ局は、“黒船”の襲来で窮地に立たされている。黒船とは、ネットフリックスやAmazonプライム・ビデオなど、海外資本の動画配信サービスのことだ。
IT関連メディア事業を展開するインプレスが2023年に実施した調査によると、回答者のうち3カ月以内に有料動画配信サービスを利用した人は全体の31.7%。3カ月より以前に利用したことのある人を含めると、過去に有料動画配信サービスを利用したことがある人は38.6%に上った。
20代の回答結果を見ると、若い世代ではさらに有料動画配信サービスの利用が浸透していることが分かる。20代女性では48.7%が3カ月以内に利用しており、男性でも44.4%となった。若い世代の半数は、すでにお金を払ってドラマやアニメを視聴することに抵抗がないのだ。有料動画配信サービスでの視聴形態が若い世代にさらに浸透すれば、テレビ離れが加速していく可能性は高い。
特にNHKが直面する現実は厳しい。現在の放送法では、NHKの電波を受信できる機器を設置しなければ、受信料の支払い義務も発生しない。さらに、“ウェブ受信料”もスマートフォンを所持しているだけでは発生しない。「パソコンやスマホで有料動画配信サービスを視聴できれば十分」と考える人が、さらに受信料を支払ってNHKと契約する可能性は低いだろう。
稲葉延雄会長の体制下で、NHKは大きく変わろうとしている。それは、番組の制作方針にも大きく表れている。実は、目標の一つとして、“海外に売れる”作品作りが掲げられているのだ。明らかにネットフリックスなどを意識したものといえる。
次ページでは、ダイヤモンド編集部が入手した内部資料を基に、目下、制作が進められている大型番組の中身に加え、NHK局内でのネットフリックスなどへの対抗意識について詳報する。