この工場には約1000人の従業員が勤務しているのに、原価を低減する仕事は誰も手掛けていない。原価低減に必要な従業員に対して原価の教育もしていない。財務会計の業務は法律上必須ですが、これは期ごとの会社の活動の結果を集計することです。この会社には、結果を良くしたり原価低減したりする活動(原価マネジメント)が行われていないのです。
続いて、外注部品を調達する調達部の日本人部長にヒアリングを実施しました。この工場では外注部品が原価の80%を占めていました。「外注部品の原価構成はどうなっていますか」と筆者が質問したところ、「部品会社は部品の見積書は出しますが、原価の明細は出しません」と回答がありました。
そこで、「価格査定はどのように行っていますか」と聞いたところ、「見積書の価格をベースに決定します」との回答でした。ベトナムで調達した方が低価格な部品が多々あるのに、依然として中国から輸入している部品が数多くあるのです。この点で、中国の部品会社からのリベートが調達関係者に流れていると感じました。
日本の社長はこのような実態を把握できていなかったのです。このような運営状態では赤字になるのも当然だと思いました。
当初はこの会社が例外だと思っていましたが、しばらくして、こうした日本企業は数多くあり、社員全員が原価を考えて仕事をしていないのが一般的だと思うようになりました。
半期ごと・月ごとの決算を行っているから、うちの会社は大丈夫だと思っている経営者もいます。しかし、半期ごと・月ごとの決算であっても、仕事が終了してから仕事の成果を半期ごと・月ごとに集計しているだけです。こうした経理部は利益を出すための仕事を行っているとはいえません。
こうした会社の経営者や経理部の仕事は、野球に例えると、野球の勝敗に直接的に関与していないスコアラーです。もちろん、スコアの分析データは次の試合の作戦には有効ですが、野球の勝敗に直接的に関与しているのは選手・コーチ・監督です。







