会社の経営は野球の運営と同じく、従業員・管理者・経営者がQCD(品質、コスト、納期/リードタイム)を業務の中で実現することです。言い換えれば、QCDを考えて業務を変え、付加価値のある業務にすることです。すなわち、業務の改善です。

 企業向けコンサルティング業界では、財務諸表を分析する会計系コンサルタントが主流を占めています。しかし、過去の仕事の結果である帳簿や会計を見て財務諸表を解析し、処方箋を書いてアドバイスを行うだけでは、会社の実態は良くなりません。会社で行われている業務をコスト面を重視した業務へと変革する必要があります。しかも、その対象は全従業員となるのです。これが原価マネジメントです。

 トヨタ自動車の例を挙げると、トヨタ自動車の経理部(または財務部)は、企業会計の業務だけではなく、会社の利益が出るように会社の他の部署へ働きかけて、原価の教育や原価のデータ収集、原価の低減を促す仕事を行っています。利益を出すには経理部の中だけの仕事では不十分であり、会社全体が原価に取り組むように促す仕事を行っています。

 会社のさまざまな組織に属している人たちは、原価を常に考えながら業務を遂行する、即ち業務の改善を行っている──。コンサルタント会社を始めた当初はこれが普通であると考えていましたが、こうした会社(トヨタ自動車)はまれであり、例外に近いと次第に理解するようになっていきました。

 知り合いの税理士に尋ねると、「会計士や税理士は原価をほとんど知らないし、原価が自分の仕事とは思っていません」との回答でした。確かに、会社の業績を集計・分析する財務会計を担う税理士や会計士は国家資格になっています。会社が儲かるようにすることが大事なのに、会社が儲かるようにする原価マネジメントの概念は認知されていないし、原価マネジメントの資格もないと気づきました。

 原価マネジメントの講演をしたり、会社を指導したりする活動だけでは不十分。もっと広く知ってもらいたいと思い、筆を執ったのが本書というわけです。