隆一さんは上場企業の副社長で、一般的に裕福です。また不貞相手との関係は10年に及ぶといいます。

 里美さんは、裁判で支払われた270万円も、実際には隆一さんが女性に代わって用意したのではないかと疑っていました。

 本来なら抑止力になるはずの慰謝料が、本人にとっては「関係を続けるための経費」に過ぎなかった可能性があります。

続いていた夫の不貞
経済的DVの疑いも

 探偵に依頼して調査して、裁判に勝っても得られていない里美さんの希望を洗い出すと2つ浮かび上がりました。

 1つは、判決後も不貞関係が続いていることを客観的に証明し、離婚や慰謝料、養育費の請求の材料にすること。

 もう1つは、夫の資産や収入を明らかにし、子どもたちとの生活を守るために、適正な財産分与や生活費を求めることでした。

 調査当日、私たちは女性の住むマンション周辺で張り込みを開始しました。

 相手は一度、探偵の調査を受けています。警戒している可能性があるため、正面に張りつくことはせず、部屋の出入りを確認できる位置を慎重に選びました。

 午後7時9分。

 一台のタクシーがマンション前に止まりました。

 降りてきたのは、隆一さんと不貞相手の女性でした。二人は周囲を気にする様子もなく、腕を組んで建物へ入っていきました。知らない人が見れば仲の良い夫婦そのものです。

 裁判所が不貞を認定し、慰謝料が支払われた後も、二人は何事もなかったかのように同じ場所へ帰っていったのです。

 翌朝9時過ぎ、二人は5分ほど間隔を空けて建物から出て、それぞれ仕事へ向かいました。わざわざ別々に行動したというわけではなく、二人とも、以前の調査報告書と同じ、いつもの生活をしていたのです。

 翌日も同様に撮影することができました。

 判決後も関係が継続していることを示す、重要な証拠を得ることができました。調査中、里美さんが繰り返し口にしたのは、女性への恨みではなく「生活の不安」でした。