「夫は、金がないと言いながら、好き勝手に飲み歩いています。生活費は最低限の現金だけ。収入も資産も支出も、私には絶対見せません」

 これは、家族に必要なお金を渡さない、家計の情報を意図的に隠すといった「経済的DV」の性質を帯びています。

 お金の話をすると不機嫌になる。生活費の不安を訴えても「俺が稼いだ金だ!」で会話を終わらせる。

 通帳や明細を見せず、「お前には分からない!」と判断する機会まで奪う。

 一つ一つは小さく見えても、積み重なると受ける側は「自分がぜいたくを言っているのではないか?」「私の感覚の方がおかしいのではないか?」と思い込まされていきます。

 里美さんが長く動けなかったのは、弱かったからではありません。自分を疑わせる構造の中に長期間置かれていたからです。

夫は「離婚はしないし、金もない!」と主張も
ようやく分かった資産状況

 私は、調査で得た日付入りの写真と報告書をまとめ、里美さんに弁護士への相談を勧めました。

 探偵にできるのは、「今、何が起きているか」を客観的な事実として可視化することです。離婚の可否や慰謝料、財産分与などの法的判断は、弁護士の領域です。

 弁護士は資料を確認し、まず家庭裁判所へ離婚調停を申し立てました。

 離婚調停は、家庭裁判所で調停委員を介し、離婚や財産分与、慰謝料や親権や養育費などを話し合う手続きです。

 併せて、別居中の里美さんたちの生活を守るため、婚姻費用分担請求の手続きも進めました。婚姻費用とは、夫婦や子どもの生活を維持するために必要な費用です。

 話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。

 金額の検討では、双方の収入や子どもの人数・年齢などに応じた算定表が実務上の目安になります。

 調停でも、隆一さんはこれまで同様「離婚はしないし、金もない!」と主張しました。

 弁護士は提出された資料を精査し、必要に応じて裁判所を通じた照会手続きなども用いながら、収入や財産の状況を明らかにしていきました。